会長が変わるたびに、看板も方針も変わる。それは、NHKが長期の大方針を持っていないことの証左ではないか。
英国の公共放送BBCは07年に配信サービス「iPlayer」を始め、13年には当時のトニー・ホール会長が「iPlayer」を「BBC全体への玄関口」にすると表明。15年には「インターネット・ファースト」の放送局を目指すと宣言し、翌16年には「iPlayer」の視聴にも受信料にあたるライセンスを必要とした。トップは何度も替わったが、「放送からネットへ」という方向は20年近くにわたって一度も変わっていない。
そのBBCは、自社の枠を超えた「本来的な意味でのプラットフォーム」づくりも構想している。今年3月、特許状の見直しに向けた意見の中で、「iPlayer」をほかの放送局にも開き、商業部門の傘下にあるUKTVのチャンネル群を統合する案が示された。
自社の番組だけでなく、ITVやチャンネル4など英国の公共サービス放送の番組も載せる場をつくる考え方だ。まだ構想段階だが、実現すればプラットフォームの名にふさわしいものになるだろう。
「地方との提携」が進むべき道だ
NHKが本気で「プラットフォーム」を名乗るなら、目指すべきはこちらではないか。NHKが配信の基盤や技術というインフラを提供し、民放や新聞、地方のメディアのコンテンツも載せて、公共的な情報圏を支えるというイメージだ。
今回の経営計画案では、7つの役割の1つとして「地域ジャーナリズムの維持に貢献」を掲げている。ならば、地方紙や地方局と組むことこそ、その近道のはずだ。
だが計画案に書かれているのは、NHKだけの情報発信である。偽・誤情報が広がり、地域からニュースが消えつつある時代に、NHKが単独で発信を強めるだけで、情報空間の公共性を担っていけるのか。何かにつけ「NHK=民業圧迫」だと訴えてくる新聞や民放に対しても、頭を下げて協力を仰ぐくらいの覚悟がいる。
計画案は、受信料収入を3年間5830億円で横ばいと見込みつつ、支払数の減少が続けば30年度に5600億円台まで落ち込むリスクシナリオも出している。看板をかけ替えている余裕は、NHKにはもうない。「プラットフォーム」という言葉にふさわしい中身が伴わなければ、若い世代にとってNHKはますます意味のないメディアになっていくだろう。


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