生涯を通じて結婚と離婚を繰り返すことになる、宇野千代。最初の結婚生活はたったの10日で、ピリオドが打たれた。相手は、従兄の雄一(自伝『生きて行く私』での表記、本名は藤村亮一)である。
横暴な振る舞いが多かった父の俊次が、伯母との間で強引に進めた結婚だけに、激怒されるはずだと、千代は覚悟を決めたことだろう。だが、勝手に嫁ぎ先から逃げ帰ってきた千代を、父が怒ることはなかったという。
刃物を振り回して暴れた父
このとき、父はすでに病魔に冒されており、そんな気力も失われつつあったらしい。ドラマ『ブラッサム』では、そんな千代の父をモチーフとした葉野清治を、渡部篤郎が演じて話題となった。
ドラマでは、病に伏していた清治が半狂乱状態になり、刃物を持って暴れまわる場面があったが、宇野千代の実体験に基づくものだったようだ。千代は自伝『生きて行く私』で、当時をこう振り返っている。
「誰もそばにいなかったほんのちょっとの隙に、父は台所にあった出刃庖丁を手に持って、往還さきににじり出たのであった。『寄るな、寄って怪我するな、寄るとどいつもぶった切るぞう』と言って、庖丁を振り廻した」
その後、まもなくして父は死去。57歳でその生涯を閉じた。


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