そこで、2026年10月から、キャンプ用品の販売を試験的に行う売店がキャンプ場内に設けられることになった。もちろん、仕掛け人の中心人物は松浦さんだ。一定の利用客が集まれば、大田区公認の販売店の設置が実現するかもしれない。松浦さんの試みは、そのための試金石だ。
「売店が設置されれば、便利になることは間違いありません。これをきっかけにキャンプ場をもっと有名にして、平和島に人を呼びたいと思っています」(松浦さん)
閉鎖的な街の雰囲気が変わってきた
松浦さんの狙いは、単にキャンプ用品を売ることではない。キャンプ場を訪れた人が周辺の商店にも立ち寄り、街全体がにぎわうことを期待している。「まずは街が潤って、人が来て、住んで、定着することが大事なんです」と、松浦さん。そして実際、平和島は住む街としてもかなり魅力的なのだと語る。
「品川から電車で6分ほど。都心に出るには便利だし、羽田空港にもアクセスが良好です。それでいて大きな公園がいくつもある。ボートレース場のイメージが強いかもしれませんが、暮らすにはいい街ですよ。僕らが子どものころは、八百屋で大根をおまけしてもらうような、人情のある街でした」(松浦さん)
ただ、人情の街が、そのまま「住みよい街」とは限らない。松浦さんはこんな言い方をする。
「このあたりは旧東海道に近くて、深い歴史を持った下町的な雰囲気があった。でもね、だからこそ閉鎖的な雰囲気もあったんですよ。地域がちょっと離れると『よそ者だ』みたいなね(笑)。他の地域からやってきた人が街のことについて意見すると、『俺の家はこの土地に江戸時代から暮らしてるんだ、新参者が口を出すな』みたいな雰囲気が、実際あった(笑)。でも、我々の世代にはそういうことを言う人はいない。つまり、来てくれる人たちに対してすごくオープンなんです」(松浦さん)
住みやすい理由は他にもある。
「あと、家賃がリーズナブルなんです。平和島っていうとボートレースのイメージだから、一般的にはあんまり良くないのかもしれない。たぶんそういうこともあって、家賃も抑え気味なんだと思います」(松浦さん)
大手の賃貸サイトをいくつか調べてみると、たしかに松浦さんの言う通りだった。シングルタイプのマンションであれば、7万円台前半からの物件が多数見つかる。品川から6分の街とは思えない価格だ。その理由が、旧東海道にある老舗の御菓子処「大黒屋」に立ち寄ったことで見えてきた。


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