したがって企業が考えるべきなのは、「AI導入によって何人分の仕事を削減できるか」だけではない。「どの判断を自動化し、どの判断権を人間に残せば、自社が目指す価値を実現できるか」である。
AI時代におけるガバナンスの中核
その設計には、経営が示す価値観、人事や事業部門の業務知識、法務・リスク部門の視点、技術者の設計判断をつなぐ必要がある。AIガバナンスを複数の関係者で検討すべき理由もここにある。
実務では、少なくとも3つを確認したい。第1に、AIに委ねる判断が誰にどのような影響を与えるのか。第2に、その判断が自社の価値や方針と整合しているか。第3に、誤りがあったとき、人間が介入し、理由を説明し、必要なら判断を覆せる仕組みがあるか、である。こうした確認を通じて、「人に残すこと」も「AIに任せること」も目的化せずに済む。
AI時代に問うべきなのは、「人間にしかできないことは何か」ではない。「AIにもできるようになったとして、それでも人間が担い続けるべきことは何か」である。
その答えは、AIの性能表からも、法律やガイドラインからも自動的には導かれない。どのような企業をつくり、どのような社会を目指すのか。その価値判断を具体的な業務プロセスやシステム設計に落とし込む能力こそ、AIを使う企業にとって新たなガバナンスの中核になっていく。


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