ナノプラスチックは臓器の中でも最も脳にたまるもちろん、ペットボトルの水を飲むことが健康被害につながると確定したわけではありません。しかし、ナノプラスチックが体内に取り込まれ、脳にまで届く可能性が示されていることは、知っておくべき事実です。
プラスチックの製造や加工には化学物質も関わっている
ここで、もうひとつ知っておいていただきたいことがあります。問題視されているのは、プラスチックそのものだけではありません。製造の際に、硬さや柔軟性、熱への強さ、色などを調整するために加えられるさまざまな化学物質も健康への影響という点で注目されています。
プラスチックの製造や加工には、合計でおよそ1万6000種類もの化学物質が関わっている可能性があると報告されています。中でも人体への危険性が指摘されているのが、ビスフェノールA、フタル酸エステル類、臭素系難燃剤といったグループです。
これらの中には、ホルモンの働きを乱す「内分泌かく乱化学物質」、いわゆる環境ホルモンとして作用するものがあります。生殖機能や体の発達、代謝、心臓や血管などへの影響が懸念されています。また、一部の物質では、胎児期や小児期の曝露と、子どものIQの低下や神経発達上の問題との関連も報告されています。
しかしながら、プラスチック製品の中には含まれる化学物質の情報が明記されていないものが多く、これは、安全を脅かす大きな問題だと思います。さきほど少し触れたとおり、ナノプラスチックは小さすぎて、腸の壁をすり抜けます。さらに、表面に付着した化学物質などとともに血流に乗り、さまざまな臓器へ運ばれる可能性があります。
2025年にネイチャー・メディスン誌に発表された研究は、衝撃的な結果を示しました。亡くなった方の臓器を調べると、高い濃度で蓄積するとされる肝臓や腎臓よりも、はるかに高い濃度で脳にプラスチックが蓄積していたのです。
具体的には、亡くなった方の前頭葉から採取した脳組織を水酸化カリウムで処理し、生体成分をできるだけ取り除いた上で、残った微粒子に含まれるプラスチックの量を詳しく測定しました。その結果、2024年に採取された脳組織では、1グラムあたり中央値約4.9ミリグラムのマイクロ・ナノプラスチックが検出されました。
これは脳の重さのおよそ0.5%に相当する量です。しかも、肝臓や腎臓よりも脳のほうが高い濃度だということがわかったのです。さらに、この濃度は2000年代、2010年代、2020年代と、年代を追うごとに上昇していました。ただし、日本の研究者からは脳内のナノプラスチックの正確な測定は技術的に難しく、結果の解釈には慎重さが必要だとの指摘もあります。


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