高齢者を取り巻く生活課題には、8050問題(中高年の子どもが高齢の親に依存)、老・老介護、虐待、経済的困窮、身寄りなし問題などがある。それらが複雑に絡み合うケースも多い。
ケアマネは、介護サービス利用者本人が尊厳を保ちながら生活を送れるよう、利用者を取り巻く状況や環境と向き合っている。一方、訪問先では、閉ざされた空間の中でハラスメントに直面し、恐怖を感じながら対応しているケアマネが少なくない。
この10月から、すべての事業主に対しカスタマーハラスメント対策が義務化された。利用者や家族によるハラスメントがあれば介護サービス契約を解除することを重要事項説明書に盛り込む動きも進む。
だが、それだけで問題は解決しない。厚生労働省のハラスメント対策マニュアルでは、事業所側からの契約解除には「正当な理由」が必要とされる。しかも、予告期間を設け、後任事業所の紹介などを行えば契約解除が認められる可能性がある、とされている。契約解除にハードルを設けているのは、介護を受ける高齢者らの生活に必要な支援が突然途絶えることを防ぐためだ。だがこのハードルは、訪問先でハラスメントに直面しているケアマネからすると、身の危険を感じながら契約解除日まではサポートを続けなければならないことを意味する。
ケアマネの全国的な職能団体である日本介護支援専門員協会は、川口の事件が起きた翌日、柴口里則会長名による声明を公表した。迅速な対応が評価されるかと思いきや、ケアマネたちからは困惑の声が上がった。とりわけ、以下の文言についてだ。
〈このような事件に屈することなく、これからも高齢者およびその家族の生活の安寧のために邁進してまいる〉
事件について詳細な情報がなく、原因も不明のまま、再発防止への具体策も示されない中で発出された「屈することなく邁進する」というメッセージに、多くのケアマネが困惑した。
埼玉県の事業者の男性(50代)は「何を言ってるんだと思った。使命感は大事だが、精神論ではもう立ちゆかない」と違和感を強く訴えた。
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