「退職理由はいくつかありますが、コミュニケーションのすれ違いが影響しているケースも少なくありません。たとえば、こんな相談がありました。ある当事者の方は、熱心に仕事に取り組んでいたのですが、お客様へのご提案が少し苦手でした。そのため上長は、『もう少し伝え方を工夫してほしい』と、仕事上の改善点として伝えました。
ところが、ご本人には、自分自身を否定されたように受け止めてしまって……。上長としては仕事についてのアドバイスをしたつもりでも、本人が受け取った意味は異なっていました。こうした『伝えたこと』と『受け取ったこと』の間のズレは、双方が確認しなければ、なかなか気づくことができません。企業側も、どう伝えたらいいのかわからないという課題がありました」
企業側からすると、伝えたいことがうまく伝わらず対応に苦慮する。当事者にとっても就労してから課題に直面し、自信を失う結果になりかねない。これでは企業も当事者も、どちらにとってもいい結果をもたらさないおそれがある。
こうしたケースの相談を多く受けてきた中尾さんは、2025年6月、対話型トレーニングプログラム「ableto(エブルト)」を開始した。
学生・企業双方にメリットのある場所をめざして
abletoは、障害や特性のある学生・若年者と企業が、対話や仕事体験を通じてお互いを理解し「一緒に働くためにはどうしたらいいか」を考える対話型のトレーニングプログラムだ。
参加者は、あえて障害や特性の有無で絞っていない。なぜなら自分自身の特性や働きづらさに気づいていないケースも、学生では珍しくないからだ。
学生は、企業やメンターとのやりとりを通し、自分の特性や得意なこと・不得意なことを知る。さらにそれを相手にどう伝えるか、困った時にどう伝え、相談したらいいかを対話しながら学ぶ。


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