なぜ、障害者雇用に積極的だった企業が大変になったと訴えているのか。それは、一人ひとりに合わせた配慮が、これまで以上に必要になっているのが原因のひとつと中尾さんは言う。
障害者雇用に積極的だった企業こそ苦しいわけ
「2018年、雇用義務の対象に精神障害者が加わった時の法定雇用率は2.2%でした。当時は現在よりも求められる雇用人数が少なく、社風や仕事内容に合った人を採用する余地がありました。ところが近年は人数が増えたため、会社に合う人かどうかは二の次となってしまいがち。うまくマッチングしないケースが少なくありません」
つまり、法定雇用率が2.2%程度だった頃は、各部署での配置だけでなく、特例子会社や障害者雇用専門の部署をつくり、マニュアル化された定型業務や、障害特性に配慮した工夫や分業体制によって雇用する企業もあった。
ところが、法定雇用率の上昇により、こうした特例子会社や専門の部署だけでは対応しきれないケースが起きている。場合によっては、企業や仕事内容のすり合わせが十分にできていないまま採用し、人数を確保せざるをえない場合もある。
特に、精神障害・発達障害のある人の場合、身体障害のある人のようにバリアフリーの環境を整えれば解決する問題ばかりではない。本人の特性や希望、自己理解だけでなく、仕事内容や職場環境、周囲との関係性も含めて、双方ですり合わせる必要がある。
もちろん、働くうえで一人ひとりの事情に合わせた合理的配慮を行うことは非常に大切だ。しかし現実問題として、現場のリソースには限りがある。
さらに細かくマニュアルを作成し、丁寧に指導をしても、なぜかすぐに辞めてしまうケースも少なくないと中尾さんは言う。独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構によれば、就職後1年時点の定着率は58.4%(2017年)。5人に2人は退職していることになる。


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