実は近年、衛生面などの問題に加えてとりわけ問題視されているのが、一部の夜市や観光地における「ぼったくり」とも受け取られかねない価格設定だ。
インバウンド需要の増加に伴い、市場価格や台湾人の一般的な消費感覚から大きく乖離した価格を設定する店舗が一部に存在し、外国人旅行者だけでなく、地元の台湾人との間でもトラブルや批判を引き起こしてきた。
台北市内の有名夜市におけるカットフルーツ、とくにマンゴーやグアバ、レンブ(蓮霧)などの販売価格をめぐるトラブルは、その代表的な事例だ。
例えば、士林夜市を修学旅行で訪れた台湾人中学生がカットフルーツ6袋を購入した際、1300台湾ドルを請求されたケースがある。
生徒たちが「高いので購入しない」と断ろうとしたところ、店側が「すでに切ってしまったため返品できない」と言いい、購入を迫った。この問題がSNSなどで拡散され、夜市における価格表示や販売方法のあり方が改めて議論されることになった。
こうした事例では、一般的な果物店やスーパーマーケットで購入する場合と比べて著しく高額な価格が設定されていることに加え、100グラム当たりなど消費者にとって最終的な支払額がわかりにくい価格表示も問題となっている。
事件で浮き彫りになった現在の台湾食文化
もちろん、観光地では一般の市場やスーパーより高い価格で商品が販売されること自体は珍しくない。しかし価格を明確に示さないまま商品を加工したり、客が望んでいない量まで追加したりしたうえで、高額な代金を請求する行為は、観光地における消費者保護という観点からも問題となる。
前述してきたことを総合的に考えると、台湾における中華料理や屋台料理の変化は、単に「料理の味が落ちた」という一面的な問題ではないことがわかる。
料理人の世代交代や伝統技術の継承問題、飲食店を取り巻く家賃・人件費・食材費の上昇、外食文化の多様化、外国料理の普及、そして夜市や観光地を取り巻く観光ビジネスの変化――。こうしたさまざまな社会的・経済的要因が複雑に絡み合い、現在の台湾の食文化を形作っている。
台湾の中華料理がかつての姿から変化し、屋台料理や小吃が台湾を代表する食文化として世界的に知られるようになったことも、こうした社会情勢と経済事情の変化の結果と言えるだろう。
そして、その変化は現在も続いている。伝統的な料理を守ろうとする料理人がいる一方で、現代の消費者の嗜好や観光客の需要に合わせて、新しい味や業態も次々と生まれている。
今回の堀井氏をめぐる騒動も、単純に「台湾料理がおいしいか、まずいか」という個人の味覚の問題だけで片付けることはできない。台湾で長年培われてきた食文化と、それを取り巻く社会や経済の変化を考えるうえで、改めて台湾の「食」の奥深さと、その一方で抱えているさまざまな課題を考えさせる出来事だったのではないだろうか。


※ログイン後、コメント入力が可能です。