有料会員登録
ビジネス #ホットイシュー

台湾料理は「まずくなった」のか? 日本人YouTuberの夜市酷評が日台で大炎上、老舗中華の衰退と「美食の島」の変化

14分で読める
物議を醸した在台湾日本人YouTuber「ゾロ」こと堀井裕氏のYouTube画面(写真:YouTubeの画面をキャプチャしたもの)
2/6 PAGES
3/6 PAGES
4/6 PAGES

高額な家賃に加え、人件費や原材料費の上昇に直面すれば、飲食店は店舗規模の縮小や人員削減、営業時間の短縮など、さまざまなコスト削減策を迫られる。特に、長時間の仕込みや熟練した職人を必要とする伝統料理は、効率化が難しいという問題を抱える。

そのため、仕込み工程の簡略化や調理時間の短縮などが進められれば、結果として、かつての老舗が提供していた味や調理法を維持することが難しくなる可能性もある。ただし、家賃や人件費の上昇が直接的に料理の質の低下を招いていると一概に断定することはできず、あくまで老舗の味を維持するうえでの経営上の制約の一つと見るべきだろう。

他方、1990年代以降の台湾社会における人口構造や食文化の多様化も、従来の中華料理を取り巻く環境が変化した要因の一つと考えられる。

台湾への外国人流入も作用

台湾では1990年代以降、ベトナム、タイ、インドネシア、フィリピンなどから外国人労働者や外国籍配偶者が増加した。台湾ではこうした外国籍・中国大陸籍などの配偶者を中心とする人々を「新住民」と呼んでおり、現在では台湾社会を構成する重要な一員となっている。台湾内政部移民署も、ベトナム、インドネシア、タイ、フィリピンなどを出身地とする新住民に関する統計や生活実態調査を公表している。

こうした人口移動を背景として、ベトナム料理、タイ料理、インドネシア料理などの東南アジア料理が台湾社会に定着していった。例えば、ベトナムのフォーやタイ料理などは、現在の台湾では特別な存在ではなく、都市部を中心に日常的に楽しめる外国料理となっている。

さらに、日本料理や洋食をはじめとする多国籍料理の普及によって、台湾人、とりわけ若い世代にとって外食の選択肢は大きく広がった。かつてのように「中華料理が外食の中心」という環境ではなくなり、さまざまな国や地域の料理を日常的に選べるようになったのである。

その結果、調理に手間と時間を要する伝統的な中華料理の相対的な存在感が低下した可能性もある。これは必ずしも伝統料理そのものの人気がなくなったことを意味するわけではないが、若い世代の外食需要が多様化したことは、老舗の伝統料理店が置かれた環境を変化させた一因と考えられる。

東南アジアの香辛料や調理法を台湾人の味覚に合わせて取り入れた「台式泰國料理」や、台湾の食材・調味法を取り入れたベトナム料理など、新たなジャンルが定着する一方、伝統的な中華料理を専門とする老舗の存在感が相対的に薄れているように見えるのも事実である。

こうした変化が積み重なった結果、「かつての中華料理とは味が変わってしまった」「昔ながらの本格的な味が失われつつある」という印象が生まれているのかもしれない。そこには、料理人の世代交代、消費者の嗜好の変化、飲食業を取り巻くコスト環境、そして台湾社会そのものの多文化化という、複数の要因が絡み合っているのである。

5/6 PAGES
6/6 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ビジネス

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数