「子どもの声がうるさい」への、ひとつの答え
冒頭の問いに戻ろう。保育園の音をめぐって地域との摩擦が生まれることもあるなか、「まちの保育園」はなぜ、あえて園を地域に開いてきたのか。その答えのひとつは、園の周囲で実際に起きた変化に表れている。
例えば、子どもたちとの関わりをきっかけに、おしゃれをして外出するようになった高齢者がいたという。店を閉じることになった地域の人からは、「この跡地を子どもと地域のために使ってくれよ」と声をかけられたそうだ。
町内会でも、こんな変化が起きた。
「町内会の方たちが、子どもを中心に街をつくるという考えに共感してくださって。『子どもたちがキャッチボールできるような公園をつくろうよ』と声を上げてくれたり、子育て世代も『子ども・子育て広場みたいなものをつくろう』と動き始めたりしました」
小中学生が保育園へ遊びに来るだけでなく、園の子どもたちも街へ出かけていく。
「保育園って、地域の若い世代がつながりやすい場所なんです。そこに、自治会などを通じて地域の高齢者も加わると、世代を超えた交流が生まれていきます。保育園が、いろいろな世代をつなぐ場所になるんですよね。そう考えると、保育園は街づくりの拠点にもなれると思っています」
「子どもの声がうるさい」
そうした声が聞かれる時代に、「まちの保育園」の周りでは別の光景が広がっている。パンを買いに来た客がガラス越しに園庭を眺め、町内会が子どものための公園を語り合う。顔なじみになった子どもの声は、騒音ではなく街の音になる。松本さんが15年かけてつくってきたのは、そういう日常だ。


※ログイン後、コメント入力が可能です。