ヤニヴ氏の機転で、機体は何とか水平に戻すことができた。その後、乗客として乗り合わせていた非番のパイロットの1人が操縦桿を握った。同機にはフライドバイの非番パイロットが複数人搭乗していた。
「私たちは、犯行に使われたと思われる凶器を探しましたが、見つかりませんでした。機内に別のテロリストが潜んでいる可能性を考えたからです。万が一の場合に備えて、さらに何人かの乗客に協力を呼びかけました」
ショタ氏は、イスラエルで開業する歯科医師だった。一緒に副操縦士をコックピットから閉め出した後、彼は機長の手当を始めた。
「それから私はずっと彼のそばにいました。機長はずっと祈っているようでした。私は、彼がそのまま息絶えてしまうことを恐れました」
非番パイロットが尾翼が壊れた飛行機を操縦
刺傷による大量出血で一時は命が危ぶまれる状態となったが、適切な緊急止血手当により、スミット機長は一命を取り留めた。
午前8時31分、操縦席に座った非番のパイロットが機体の立て直しを図る中、一般緊急事態を示す「コード7700」を発信した。
午前8時38分、不法介入(ハイジャック)があったことを示す「コード7500」が送信された。これを受け、イスラエル空軍の戦闘機が緊急発進(スクランブル)を行ない、上空での警戒態勢に入った。
午前8時50分、イスラエルのネタニヤフ首相とカッツ国防相が、治安機関幹部を集めて緊急安全保障会議を開いた。自国に向かっている機体の安全確認と、着陸先との緊急外交調整が進められた。
午前9時35分、操縦桿を握る非番パイロットと管制との協議により、負傷者の救護と安全確保のため、最も近いサウジ北西部のタブーク空港へ緊急着陸することが決定された。イスラエル人にとって、どの国なのかもわからない空港だった。
このあと10分間ほど、同機は管制レーダーから姿を消す。そして午前9時45分、戦闘機の護衛を受けつつ、同機は無事にタブーク空港へと降り立った。機内では「アム・イスラエル・ハイ」(イスラエルの民は生き続ける)の合唱が起きた。
飛行機の後部は無残な状態で、尾翼全体が破損していた。急激に高度を下げたことにより、機体に過度な負荷がかかったためだ。無事に着陸できたのはパイロットの手柄と言える。


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