「僕が小学6年生のときのことです。祖母はこの団地の明るさ、駅からの近さ、そしてなにより、のどかさがいいと気に入っていました。家が近かったのもあり、僕もよく遊びに来ていた思い出の場所です」と話す川内さん。
時を経て祖母がひとり暮らしに不安を感じるようになってからは、しばらく空き家状態に。両親が時折訪れ、手入れをしていましたが、管理の手間、固定資産税や管理費の負担に加え、祖母の高齢者住宅への入居が決まり、その費用を工面する必要から、売却の話が持ち上がります。そこに名乗りを上げたのが、孫である川内さんでした。
購入の決め手になったのは6階からの眺望。向かい側は公園で、その先は高い建物が建てられない第一種低層住居専用地域。この先も見晴らしはずっと確保されています。もちろん、祖母の思い出も大きいですし、自分ひとりの設計で空間をつくり上げてみたかったというのも強い動機になりました」
相続ではなく、正式に祖母から買い取る形を選択。物件購入費は住宅ローンで、リノベーション費用は融資でまかないました。親族間売買で住宅ローンを組む手続きは大変だったと川内さんは振り返ります。
とはいえ、そのかいは大いにありました。当時の川内さんは、20平米の1Kにひとり暮らし。ローン返済額に管理費・修繕積立金を合わせても、月々の支払い合計は、その家賃プラス数万円。少ない負担増で、3倍近い広さと、理想を追求したクオリティの高い住まいを手に入れたのです。この選択によって川内さんのQOL(生活の質)は、一気にアップすることとなりました。
自分のための空間だから、とことん妥協なしでこだわり抜く
川内さん宅に入って、まず“ハッ”とするのは、独特の色トーン。白壁のようでいて、ほんのり青みがかったニュアンスがあります。青系の白と聞くと、寒々しくなりそうなところ、ぎりぎりのラインでリラックスできる色合い。ビニールクロスではなく、ペンキ塗装をした壁だということも、空間に奥行きと豊かな表情を生み出している理由でしょう。

