開発したのは、数万のレシピデータを料理ジャンルごとに分類し、独自の栄養評価基準に基づく栄養バランスを考慮した献立を、AIが自動で組み立てるシステムです。運動習慣、減塩ニーズ、嫌いな食材、性別や体重、体脂肪率といった細かい条件に応じて、パーソナライズされた数日分の献立を提案します。食事に対するユーザー評価によってAIが好みを学習するため、使うほど提案精度が上がる設計になっています。
興味深いのは、献立づくりに加えて、複数メニューを同時に調理する際の最適手順を導き出す機能も備えている点です。たとえば3品の献立を、コンロ4口とオーブン1台という設備制約のもとで同時に作る場合。レシピを調理工程の単位に分解し、並行調理の最適手順をAIが組み立てます。
さらにこのシステムはAPI化されており、外部サービスとの連携も可能な設計です。結果としてこの企業は、個人向けのBtoCサービス、他業種企業へのAPI提供など、複数の収益チャネルを立ち上げつつあります。蓄積されるだけだったデータが、新しい事業の基盤になったのです。
その取り組みは、どの部門にも収まらない
こうした事業構造の書き換えを目指す取り組みは、既存の事業構造の中で改善を積み上げるプロジェクトとは、質的に異なるマネジメント上の課題を生みます。
まず確認すべきは、そのプロジェクトのオーナーが誰かということです。既存プロセスの改善であれば、答えははっきりしています。営業部門のAI活用なら営業部門が、製造ラインのAI活用なら製造部門がオーナーになる。ところが事業構造そのものを書き換える取り組みでは、この問いに答えられません。既存のどの部門にも収まらないからです。
ここで、既存事業部門のどこかに無理やり位置づけてしまうと何が起きるか。その部門の短期的なKPIに引きずられ、長期的な事業開発に必要な探索が許容されにくくなります。四半期の数字を持つ部門に、数年先の探索を抱えさせることの無理がここに出ます。だからこそ、データ活用推進部門やDX推進部門のように、既存の事業部門とは別に新しい組織を設けて推進するケースが多くなるのです。この組織設計の判断は、プロジェクトの成否に直結します。


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