ただし、分ければよいという話ではありません。次に確認すべきは、その新組織が何にアクセスできるかです。この飲食チェーンのケースでは、新設された専任のデータ活用推進部門が、膨大なレシピデータと栄養評価基準という、既存事業の副産物として蓄積されたデータ資産にフルアクセスできる設計になっていました。既存事業との独立性を保ちつつ、データと知見へのアクセスは確保する。この適切な距離感が、設計の条件になります。
短期のROIでは、通らない
もう1つ、この種のAIプロジェクトに特有の課題があります。時間軸の長さと、投資の不確実性です。
この飲食チェーンは、長期間にわたって開発を続けました。新たなプロダクトが創出され、会社の事業構造そのものの変革につながる取り組みは、短期的なROIでは正当化しにくくなります。ここで問われるのは、担当部門の熱意ではありません。経営トップの意思決定と、長期的なコミットメントです。
では、その長期のコミットメントは何によって支えられるのか。この飲食チェーンの場合、経営がパーパスや長期ビジョンという上位の戦略フレームの中に、AIプロジェクトを位置づけていました。短期のROIでは正当化しにくい投資も、新事業化目標といった長期的な経営課題と結びつけば、継続的な投資を引き出せるようになります。
逆に言えば、この枠組みを用意しないまま始めた取り組みがどうなるかも見えてきます。既存プロセスの改善案件の延長線上にある評価軸で測られ、投資は過小評価されるか、あるいは正当化できないまま棚上げされてしまう。止めると決めた覚えがないのに進まなくなるプロジェクトの多くは、ここでつまずいています。
眠っているデータを収益に変えられるかどうかは、データの量でも技術力でも決まりません。その取り組みをどこに置き、何で測るのか。経営がそれを先に決められるかどうかで決まるのです。


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