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70代は無理して何とか、80代はその無理がきつくなり、90歳で「もうやめた」——91歳・阿刀田高「知的へそ曲がり」のすすめ

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直木賞作家阿刀田高さんの書斎
直木賞作家阿刀田高さん。91歳の作家の書斎(撮影:谷川真紀子 )
  • 蜂谷 智子 ライター・編集者 編集プロダクションAsuamu主宰
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子どものころから辞書を引くことが好きだった。気になった言葉があれば調べる。それが将来何につながるのかなど、考えていたわけではない。

仕事に必要な知識を、できるだけ効率よく身につけたい。そんな現代の傾向からすると、ずいぶん遠回りにも見える。しかし、役に立つかどうかわからない知識、仕事とは関係のない人との会話、何かのためではない読書——そんな寄り道が、いつか別の何かと結びつくことがあるのだと、阿刀田さんの人生から学べるのではないか。

事典や辞書類が並ぶ書棚(撮影:谷川真紀子)

「真ん中の6割」は、読書を楽しめる人たち

現在、阿刀田さんは慶應義塾の社会人向け教育機関で、現役の会社員や退職者らを対象にした読書会を続けている。彼らは社会経験が豊富で、「私も教えられることが多い」という。そんな人たちに阿刀田さんがすすめているのは、仕事に役立つノウハウ本でも、いわゆる教養書でもない。

「基本は『面白い本を読もう』です。参加される方々は、単純に面白い小説はあまり読んでいない。立派な本を読むことはあっても、面白い小説を楽しむ読書はしてこなかったんですね」

『掌より愛をこめて:阿刀田高さいごの小説集』(新潮社)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

そんな受講生たちに、読書についてこんな話をしているそうだ。

「100人いれば、黙っていても本を読む人が20人、どうやっても読まない人が20人いる。問題は真ん中の60人です。『あなたは、その60人に入っているのではありませんか』というところから話を始める。そこに入っているなら、少し面白い読書を考えてみてはいかがですか。そう問いかけています」

健康を守ることも、お金を蓄えることも、年齢を重ねていくためには必要だろう。けれど91歳の阿刀田さんを見ていると、それだけではなく好奇心のままに蓄えた知識も、長い人生のなかでは必要なのだと思える。

役に立つかどうかはさておき、面白いものに寄り道する。物事を、ときには少し斜めから眺めてみる。そんな知的な「へそ曲がり」は、91歳になった阿刀田さんの中で、今も健在だった。

【前編】「死は無である」と言い切る直木賞作家・阿刀田高(91歳)が我が子に問うこと—約60年連れ添った妻を見送り、ひとり暮らし

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