「お1人様1冊まで」
8月下旬、近所の書店に立ち寄ると、女性誌「anan(アンアン)」に付箋が貼られていた。表紙に登場していたのは、「映画ちいかわ 人魚の島のひみつ」で物語の鍵を握るセイレーンと、ちいかわたち。翌日、もう一度店をのぞくと売り切れていた。発売から2日後、版元のマガジンハウスはこの号の緊急重版を決めた。
雑誌業界をめぐる数字は厳しい。出版科学研究所によると、2025年の紙の雑誌の推定販売金額は前年比10.0%減の3708億円。なかでも週刊誌は同17.9%減の513億円となり、返品率は初めて5割を超えた。
ところが、アンアンを発行するマガジンハウス社内の管理数字によると、2026年9月期第3四半期のアンアンの利益は前年同期比で約4倍になったという。紙の雑誌の値上げ効果や、返品率改善が利益を押し上げている。なぜアンアンは逆風の中で好調を維持しているのか。2014年から約12年間にわたり編集長を務め、2026年から総編集長となった北脇朝子氏にその秘訣を聞いた。
時代の映し鏡アンアンは1970年創刊
アンアンは1970年創刊。日本初の本格的な女性グラビア誌として出発した。翌年に創刊した集英社の「non-no(ノンノ)」とともに、雑誌を片手に国内旅行やおしゃれを楽しむ若い女性たちは「アンノン族」と呼ばれ社会現象となった。アンアンはハイセンスなデザインと、その時代の女性の感性を捉えた特集で人気を集めた。
その魅力の源泉について、北脇氏はこう語る。「アンアンは時代の映し鏡だと思っています。すごくファッショナブルな時代もあれば、恋愛や感情に寄り添っていた時代もありました。アンアンの歴史は、女性の『好き』を追求してきた変遷でもあります。そして最大の強みは、ポジティブなトレンド誌を週刊で出し続けていることです。その時代にみんなが『好き』と思うものを、ビジュアルのある紙面にして毎週届ける。1週間の積み重ねが1カ月、1年、10年となり、結果として時代の映し鏡になっているのだと思います」


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