厳しい市場環境が続く一方で、北脇氏は、紙の雑誌を一様に苦境にあると捉える見方には違和感があるという。
「『紙媒体の雑誌はもうダメだよね』と一言で言ってしまうのは、短絡的だと思っています。どのジャンルのお店でも、流行っている店もあれば、うまくいっていない店もあります。アンアンは魅力的なプロダクトを作り上げる努力をしているからこそ、買ってくださる方がいる。『難しい』『厳しい』という言葉は、すべての仕事、業界にあてはまること。というよりも、その中で、いかにその時代の方々に共感してもらえるものを創れるか、そこにフォーカスしたファクトリーとしてものづくりをしている感覚です」
もちろん、すべての号が順調に売れるわけではない。売れなければ「なぜ届かなかったのか」を考える。毎週結果が出る週刊誌は、仮説と検証を年50回繰り返すメディアでもある。
ライバルは「東京ドーム」!?
デジタルに舵を切り、IPを新たな収益源にしようとする出版社も少なくない。では、紙の雑誌が生き残るには何が必要なのか。
「アイデンティティーを持って次の時代へ行かなければいけないと思っています。『こんな世界観にする』というものを決め、自分たちが持っている絶対的な編集技術と掛け合わせて化学反応を起こせば、うまくいく部分はあると思います。『紙媒体はダメ』と決めつけずに、どうしたらよくなるのかを見つけることです。雑誌が強いという、一番の宝物があるのに、そこを一番元気にしないのはもったいないと思います。
なにより雑誌を作ることが得意な人たちが集まっている出版社なので、『雑誌はもうダメ』『紙はもうダメ』と言われている今だからこそ、逆にそこを頑張ることで強さが出ると思います。IPやデジタルも大事ですが、まずは本丸をしっかりさせることです」
デジタルにはない、紙ならではの体験も重視する。「嬉しい特集がある、その号を求めて書店に行った、買った、手に取った、読んだ、その楽しさをみんなと共有した。そのリアルがあることが、一番の魅力だと思います。アンアンという雑誌を持っていることで起こる体験は、唯一無二であり続けたいと思っています。印刷代も高くなっていますが、その中でどうすれば今の時代の皆さんに感情や物の価値をきちんと届け続けられるのかを考えています」
ライバルは他の雑誌ではなく、東京ドームなのだという。
東京ドームがアーティストにとって「いつか立ちたい」と憧れる場所であるように、アンアンも「いつか表紙を飾りたい」と思われる存在でありたい。読者にとっても、表紙の発表を待ち、予約し、手に取って、誰かと見せ合う。そこまで含めて、アンアンを楽しむ体験になっている。
雑誌市場が縮小する中、アンアンは紙だからこそ生み出せる価値を磨き続けてきた。トレンドを追い続ける雑誌だからこそ、自らも表紙やコンテンツ、売り方を変え続けている。その積み重ねが、アンアンの強さにつながっている。


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