アンアン編集部は23人。5班に分かれ、それぞれが特集や表紙の制作に向けて動く。北脇氏はマガジンハウスを「ファクトリー」にたとえる。編集者だけでなく、カメラマン、ライター、デザイナー、印刷会社、取次、書店まで、多くの職人と流通網が1冊を作る。
「毎週アンアンが出ていることを、皆さんは当たり前に感じているかもしれません。でも、取材し、撮影し、デザインし、印刷して、全国の書店に届け続けるのは、ほかの人がやろうと思っても簡単にはできません。そこには『秘伝のたれ』のような技術があります」
そして編集部員が時代を追い、その移り変わりを見極める。「バブルの時代もあれば、トレンディーなものが支持された時代もありました。今は、みんなが自分の『好き』を楽しんでいる時代だと思っています。以前なら『これが流行っています』というものが1本あったと思うのですが、今はSNSもあり、トレンドがすぐに変化しますし、『好き』も無数にあります」と語る。
企画は半年から1年前に動く
その変化を象徴する取り組みの一つが、同じ号で複数の表紙を展開する手法だ。通常版に加え、表紙の異なるスペシャルエディションを発売している。「昔なら『これでしょう』と1つに決められたものが、今はいろいろな形にできます。複数の表紙を作ることで、読者とのタッチポイントが広がり、販売部数は劇的に増えました」。人物、グループ、アニメキャラクター、スポーツ選手など、表紙ごとに違う読者の「好き」とつながる。北海道日本ハムファイターズの表紙にはトレーディングカード、アニメの表紙にはシールを付けるなど、ファンにとって魅力的な仕掛けも取り入れている。
読者からの注目の的となっている表紙は、入念な準備によって決まっている。8月下旬に発売した「ちいかわ」も、映画のヒットを見てから急ごしらえした企画ではない。映画公開に合わせてタイミングを決定していた。「すべて半年から1年くらい前から動きます。流行っているものを追いかけるのではなく、流行るかもしれないものを取材するのです」。
その「時代を読む力」を象徴するのが、世界的人気を誇る韓国のグループ、BTSをめぐる表紙展開だ。
アンアンは2022年6月、グループが活動の節目を迎えるタイミングで、7人そろったBTSを表紙に起用した。そして約4年後、7人での活動が本格化する時期に、再びBTSを表紙に据えた。世界的スターの大きな節目を逃さない。こうしたタイミングを捉える編集部の嗅覚も、アンアンの強さの一つだ。「表紙には、それぞれストーリーがあります。なぜ今、この人や作品を表紙にするのかのタイミングも大切です」


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