もう一つ考える必要があるのが、マーケターと経営者の違いだ。
マーケターが経営者になることも、経営者がマーケティングに深く関わることもあるが、両者に求められる能力は同じではない。マーケターは市場を分析し、商品やブランドの価値を顧客に届け、選ばれる確率を高める。一方、経営者には資金調達、組織づくり、投資判断、リスク管理など、より広範な責任がある。
一般にマーケターは「黒子」である。広告業界でも、個人名で注目されやすいのはクリエイターであり、優秀でも世間に名前を知られていないマーケターは多い。森岡氏の場合は、大規模テーマパークのような話題性の高い案件を手がけたことに加え、セルフブランディングと発信力に長け、メディアとの相性が良かったことから、マーケターとしては異例の取り上げられ方をしてきたと言える。
一度つまずくと「実は何もできなかった」と正反対の評価に
また、森岡氏は「刀」の代表取締役CEOでもある。経営者の立場では、その発信力はむしろ武器となってきた。大きなビジョンを語り、注目を集められれば、資金も人材も集めやすい。
成果を大きくアピールしたり、組織やチームの成果を個人の功績として語ったりする、いわゆる「あれオレ」的な振る舞いは、ビジネス界でしばしば批判の対象になる。一方で、経営者には自らの実績や構想を強く発信し、周囲を巻き込む力も求められる。とりわけ巨額の資金や多くの人材を動かす大型プロジェクトでは、そうした発信力や押しの強さが、構想を現実にする推進力になる面もある。
実際、その力があったからこそ、巨額の資金を必要とするジャングリアという構想を現実の施設にまで持っていけたとも言える。
本来、マーケターとしては必須ではない発信力を持っていたがゆえに、良くも悪くも注目されてきた存在なのだ。


※ログイン後、コメント入力が可能です。