一方、マーケターの間では、森岡氏の実績に対する評価が必ずしも一枚岩ではなかった。優秀なマーケターであることを認めながらも、「世間で言われるほど圧倒的なのか」「過大評価されているのではないか」という声は、以前からも少なからず聞こえていた。
代表例がUSJのV字回復だ。森岡氏の入社後に業績が大きく回復したこと自体は事実だが、どこまでを個人の功績とみなすかについては意見が分かれていた。大型投資である「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」の導入など複数の要因があり、森岡氏一人の力で復活したわけではない、という見方も以前からあった。
イマーシブ・フォート東京の閉業や、西武園ゆうえんちの苦戦を挙げて、成功イメージとの落差が指摘されているが、この点もジャングリア開業前から言われていたことだ。
マーケティングには“野球の打率”のような明確な物差しはない
ただし、ここで注意したいのは「失敗した案件がある」ことと「マーケターとして能力がない」ことは同義ではないという点だ。ビジネスは失敗の連続である。野球では打率3割なら一流とされるが、マーケティングも似たようなものだと思う。「カリスマ」と呼ばれる人々でも、すべての案件を成功させることなどできないし、表に出ていない失敗は数多くある。
一方で、マーケティングには野球の打率のような明確な物差しがない。売り上げが伸びても、商品力、景気、競合の失策、投資額など複数の要因が絡むため、一人のマーケターの貢献度を客観的に切り分けるのは難しい。森岡氏の成功が過度に個人へ帰属されてきた可能性はあるが、逆に失敗をすべて個人へ帰属させるのも同じくらい乱暴と言っていいだろう。


※ログイン後、コメント入力が可能です。