まぁわたしの人生、みな、行き当たりばったり。ただ歩いていたら家があったから――部屋数とか日当たりとか、そんなことは考えない。ここに住みたいという雰囲気だけなのよ。――探そうと思って歩いていたわけでもないのに、それで四谷の大番町に家を借りちゃった。
何でもそんな風なやり方でした。それで罰が当たったとか、やり損なったとか、不便な思いをしたことは一度もないのね。みなよかったのね。……と、思うんです。
楽しくないなんてこと、一度もない
わたしはいつでも楽しいよ。楽しくないなんてこと、一度もない。
どんな大別嬪でも、つまらない生活していると、つまらない顔になる。それに、暇だと、つまらないことばかりして暮すようになる。
男に愛された女ってのは、ほんとに幸せねぇ。わたしなんかそんな経験が一度もない。こっちが愛してやったばっかりだけど。
でも、どうですか、自分も、自分を保って行くのには責任があるんじゃないでしょうか。男に愛されるだけではなくて……。
自分の顔を保って行く、その保ち方が大問題なんだけれど、まぁわたしみたいに、朝から晩まで自分の顔のことを気にしている女はないんじゃないかしら。そりゃあ気にするのよ、それだから、やっとこさ、保っているんですよ。
沢山食べないと頰っぺたがペチャンコになる。それよりまず睡眠。睡眠が上手にとれないと、顔はもうめちゃめちゃですね。
着物は、紺とグレーと白と黒、長年、好きな色がきまっていますから。今日はどういう気分だからどの着物、なんていう選び方をする余裕はないですね、第一に顔なの、昔っから。
昔、貧乏だった時分には、一年中同じ着物を仕立て返しては着て、寒いとか暑いとかってことさえ考えの中に入らなかった。
若い頃はね、生活がつまらないか楽しいかなんてことより、困っているっていうことだけがテーマでね。それでも、困ってるなと、思ったことがないのは、わたしの不思議な性質ですね。
入れるときから流すっていうのを承知で、質屋に着物を持って行く。それが日常生活なんですね。金に換えたいときには、売るのは面倒だけど、質屋へ入れることはすぐですから――そういう貧乏も平気。


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