取材したこの日は、1年半にわたり地域で親しまれてきた梅林店の最終営業日。閉店を惜しむ人が訪れ、息子の泰浩さんも来店した。家ではほとんど料理をしなくなった母のとんかつを久しぶりに食べた泰浩さんは、お客さんに感想を聞かれて「子どもの頃から食べてきた味、やはりおいしいです」と答えた。
最後に、常連客から花束を受け取った谷口さんに、泰浩さんは「今度は唐揚げを食べたいね」と優しく声をかけた。
実は、谷口さん自身は自分が働いていることを覚えていない。10分前のことでも忘れてしまうのが日常だ。「でも、毎回『今日はばあちゃん喫茶の日ですよ。とんかつを作ってくれませんか』とお願いすると、快くテキパキとおいしいとんかつを揚げてくれます。ほかの利用者さんも同じ場面があります。長年やってきた家事の腕は確かですから」と宮川さんは説明する。
おいしいと言ってくれるのがやりがい
ばあちゃん喫茶は、福岡市早良区の四箇田団地に広がった。団地内でなごみの家が手がける交流スペース「しかたの茶の間」で、25年5月に「ばあちゃん喫茶 しかた団地店」がオープンした。
店員は同じくなごみの家の利用者で、平川クミ子さん(76歳・要支援2)と、佐々木美幸さん(80歳・要介護2)。毎週月曜11:30~14:00、「週替わりランチ」を限定15食800円で提供する。
平川さんは病院で調理の経験があり、料理が得意。ハンバーグやコロッケ、ちらし寿司が人気メニューだ。この日のメインは肉じゃがで、朝から手際よく調理していた。
一方の佐々木さんは元看護師で、人と接することが大好き。できあがったランチをお客さんの元へ笑顔で運ぶ。「ありがとう」「来週も来ます」と声をかけられると、2人の表情が明るくなった。
「みんながおいしいと言ってくれるのがやりがい」と話す平川さんに、佐々木さんも「あなたがおるけん、楽しくてやりがいがあるもんね」と信頼を寄せる。閉店した梅林店で働いていた谷口さんを含む3人は、今後しかた団地店で働く予定だ。


※ログイン後、コメント入力が可能です。