梅林店としかた団地店では、働く店員に収入がある。当日の売り上げの25%を店員で均等に分け、毎月封筒に入れて手渡す。「子どもが来るときにビールを買う、貯金するなど、使い方は人それぞれです」と宮川さん。働くことが役割や居場所になるだけでなく、収入にもつながっている。
ばあちゃん喫茶をフランチャイズ加盟店として始めた宮川さんは、この試みの意図をこう語る。
「認知症があっても、できることはたくさんあります。忘れてしまうことがあっても、その人が長年暮らしの中で身につけてきた力までなくなるわけではありません。家では『仕事が増えるから余計なことをしないで』『何回言ってもわからん』と言われてしまう人でも、力を発揮できる環境を整えれば『ありがとう』と言ってもらえることがある。私たちが大切にしているのは『この人に何ができるか』だけでなく、『この人と一緒に何ができるか』なんです。できることに目を向けて、その人が持つ力を生かすにはどうすればいいかを考えていきたいと思っています」
高齢者ビジネスを次々と立ち上げる大熊さんは「認知症というと、みんな怖がってネガティブに受け止めています。すでに認知症のばあちゃんたちでさえ、自覚がなく『認知症だけにはなりたくない』と言うくらいですから。でも、認知症でも介護を受けていても、人は役割があれば輝ける。それを示していきたいんです」と力を込める。
ばあちゃん喫茶は全国各地に広がる
ばあちゃん喫茶は、うきはの宝のフランチャイズとして現在、福岡県内をはじめ熊本と佐賀、長崎、兵庫、静岡まで広がっている。
超高齢社会に突入した日本では、今や65歳以上の高齢者が人口の約3割を占める。厚生労働省の22年調査では、65歳以上のうち認知症の人は12.3%、軽度認知障害の人は15.5%で、合わせて27.8%と推計されている。本人はもちろん家族や近所の人まで含めると、認知症はもはや誰にとっても身近なテーマなのだ。
介護を受ける存在から、誰かを喜ばせる存在へ。一皿のとんかつから始まった挑戦は、高齢になり介護が必要になっても、地域で役割を持ち輝ける場として広がっていく。


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