午後4時半。部下からチャットが飛んでくる。
「資料できました。確認お願いします!」。上司がファイルを開く。……うーん。
数字の根拠が弱い。結論も少しわかりにくい。しかも、この点は前にも一度伝えたはず。
以前なら、すぐに声をかけていたところだが躊躇する。
「『前にも言ったよね』は、責めているように聞こえるかな」
「『どうしてこうなった?』も、詰めていると思われるかもしれない」
考え始めると、もう何を言っても危ない気がしてくる。チャットの返信欄に、「ここ、もう少し修正してもらえる?」と打っては消す。「一度、話そうか」と打って、また消す。そして数分後。
「確認しました。ありがとうございます」と無難なひと言だけを送信する。
部下にしてみれば、「OKだったんだ」と思うだろう。一方の上司は、自分で修正を行いながら小さくため息をつく。
「後輩育成キャンセル界隈」が話題に
最近、企業研修の現場で、こうした声を聞くことが珍しくなくなりました。
注意できない。踏み込めない。聞かれなければ教えない。
嫌われたくないからではない。面倒だからでもない。「何でもかんでもハラスメントと思われるのが怖いから、関わらない」。そんな管理職が増えているのです。
「もう、余計なことは言わないことにしたんです」。ある管理職が、ため息交じりにそう話してくれました。以前なら、部下の資料を見て「ここはもう少し考えたほうがいい」「この書き方だと相手に伝わらないよ」と声をかけていたそうです。そして、ミスが続けば、原因を一緒に振り返ることもあったといいます。ところが最近は違います。
「言い方がきついと思われたらどうしよう」「指導したことで、ハラスメントだと言われたら困る」「本人が嫌がっているなら、そこまで踏み込まないほうがいい」
そう考えているうちに、必要最低限の業務連絡だけになっているのです。


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