大西さんは、そうした声が上がるのは想定内と受け止めつつ、引き下がらなかった。目に見える短期的な生産数だけでなく、安全衛生や整理整頓によってケガや事故を防げば、結果として、退職や休職のリスクを減らすことにつながる。長期的に見れば、生産性の向上に寄与する確信があったからだ。
すると、活動開始から1年半が経過した頃、現場に変化が生まれ始めた。
「最初は改善案が出ず、管理職が主導していました。今では、委員会を通さずに自主的に、整理整頓や安全対策を済ませてくれる社員が出てきました。産休・育休から約1年ぶりに復職した従業員は、『資材や工具の場所が整理されて探しやすくなった。すごく良い変化が起きている』と感動してアンケートに書いてくれたんです。うれしかったし、成果を実感しましたね」
現在では生産性が改善し、製造現場の残業はほぼゼロを維持している。
「その報告、製造現場に関係ないのでは…?」
大西さんは、製造部門と営業部門との間にある温度差も感じ取っていた。
それは、年に1回開催される、社内発表会での出来事だった。展示会に参加したスタッフが、「展示会で披露したブルーラベルマッチがとても好評で、新しい取引先が複数社決まりました」と報告した。すると製造現場の社員から、「その報告、製造現場には関係ないのでは…?」と厳しい意見が寄せられた。
「営業が受注しなければ、工場で商品を作ることはできません。一方で、工場が質の高い製品を作ってくれなければ、営業は販売することができません。お互いに支え合っているはずなのですが、どうしても『作る現場』と『売る現場』の間で、視点のズレや関心の差が生じてしまうんです」


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