「2020年のコロナ禍以前までは、管理職が毎日のように3代目(当時の会長)の自宅へ出向き、現状を報告して指示を仰ぐというスタイルが定着していました。製造業ということもあり、決められた生産計画に基づいて正確に作業を行う指示命令系統が必要不可欠な側面は確かにあります。しかしそれでは、現場の人間が指示を待つだけの状態になりがちです。弊社も、自分たちの意見や改善案を口にしない文化が染み付いてしまっていました」(大西さん)
そこで大西さんは、「働きやすい会社」ではなく「働きがいのある会社」へと舵を切ることを決意する。
「休日が多い、給料が良いといった条件面を整えるのはもちろんのこと、自分たちが作るプロダクトに誇りを持って、自分たちの意思で職場を良くしていこうと行動できる人も増えてほしい。そのためには、チームワークや関係性を構築すること。それが本当の意味での『働きがい』だと思っています」
まず、経営理念を刷新した。祖業であるマッチ事業にひもづけて、「歓びあるモノヅクリを通じて、関わるすべての人を明るく照らし続ける」という新たな理念を掲げ、従業員が主体的に動ける仕掛けづくりに取り組み始めた。
「15分あれば、マッチを何本作れるのか」
その改革のメインとなったのが、2024年後半から本格的に導入した「委員会活動」だ。
管理職からの提案を受け、「安全快適委員会」や「3S委員会」といった領域ごとに「委員会」という名のチームを設置。普段は交流の少ない別部門のメンバー同士を交ぜ合わせて、週に1回、15分間だけ課題解決のための活動やミーティングを行うというものだ。
「1回の活動を15分と短時間に区切ることで、集中して課題に向き合えるようにしました。『今週は自分が提案した改善策を試してみよう』と、小さなことでも自分たちの手で職場を変える体験を積んでもらうことが狙いでした」
しかし、長年同じ職場で培われた意識を変えるのは容易ではなかった。新しい取り組みには社内から反発や戸惑いの声が上がった。
「『そんな15分の時間があったら、マッチを何本作れると思っているのか』といった直接的な意見もありました。生産現場の目線からすれば、目に見える数字(生産数)が15分間ストップすることに対する焦りや疑問があったのだと思います」


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