「主要事業だった紙事業を手放すなんて、会社として大丈夫なの?」
「次は、マッチ事業も畳むんじゃないか?」
社内からはそんな声も聞こえたという。残されたのは、市場がピーク時の100分の1以下にまで縮んだマッチ事業のみ。冒頭で取り上げた2022年のブックマッチの生産終了も、この激動の渦中で起きた出来事だった。
こうしてマッチ事業の未来を、5代目大西さんが一手に引き受けることになった。
「機械を新しくする前に、市場を創る」
「マッチに付加価値をつけたかったんです」
大西さんは、従来どおりの製造を続けるだけでは衰退は避けられないと考えていた。現在稼働するマッチ製造機は50年選手。現場からは、「古くなった機械を新しくしてほしい」という声も上がった。しかし、需要が先細りする中でマッチのための設備投資を行っても、何千万円もの借金を返せる保証はどこにもない。
「実は、このマッチ製造機そのものも製造終了してしまったんです。故障しても部品すら取り寄せられません。壊れたら終わりです。だからといって先に設備投資をするのは違う。順番が違うんです。機械を新しくする前に、まずは新しい市場を創り出す。だから『商品開発』に投資すべきだと考えました」(大西さん)
2024年1月、大西さんの呼びかけにより、新商品開発プロジェクトが発足した。
手を挙げたのは、20代の若手から60代のベテランまで、立場も年齢もバラバラな8人の有志メンバーだった。そのなかには、紙事業の譲渡で「この会社、大丈夫?」と強い不安を抱いていた当時入社3年目の若手メンバーや、「新しいニーズに挑戦したかった」と参加を決意した生産本部部長の小林賢司さんの姿もあった。
幸運にも同プロジェクトは、兵庫県が主催する後継者向けの新規事業開発支援プログラムに採択された。このプログラムをきっかけに大西さんは「ロングライフデザイン」をテーマに地域の個性やものづくりを伝えるデザイン会社「D&DEPARTMENT(ディアンドデパートメント)」と出会いパートナーシップを締結。プロジェクトにとって大きな追い風になっている。
同社と毎月ミーティングを開催し、各メンバーが自社の弱みと向き合い、何が強みとして生かせるのかを探った。
弱みは「若い世代の認知度が低い」「需要が減っている」という現実。一方で強みとなる糸口に見えてきたのは、「アウトドアの流行」や「アロマ・キャンドルブーム」、「昭和レトロのエモさ」といった時代の追い風だ。こうした潮流と自社製品の相性を掘り下げることで、20〜30代に訴求する「おしゃれなマッチ」を目指そうと決まった。


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