ではなぜ、インフルエンザが心筋梗塞につながるのか。それは、感染すると全身に強い炎症反応が起こるからだ。その結果、動脈硬化がある人は、血管の壁にできたプラークが不安定になり、破れて血栓ができる。それが冠動脈を塞げば心筋梗塞になる。
つまり、動脈硬化に対して、インフルエンザ感染が「最後の一押し」になる可能性があるのだ。
では、ワクチンを接種すれば心筋梗塞の発症リスクを減らせるのだろうか。
これについては、患者をワクチン群と対照群を比較した無作為化比較試験の結果をまとめたメタ解析が発表されている。トロント大学を中心とした研究チームが、2022年4月に『JAMA Network Open』に発表したものだ。
研究では、6件の試験の計9001人を解析。その結果、心筋梗塞、脳卒中、心血管死などをまとめた「重大な心血管イベント」はワクチン群で34%少なかった。さらに最近、心筋梗塞や不安定狭心症など、心臓の血管が急に詰まったり狭くなったりする急性冠症候群を起こした患者に限ると、心血管イベントは45%少なかった。かなりの予防効果といっていいだろう。
外来では、「父が50代で心筋梗塞になりました」「母が脳梗塞でした」という話もよく聞く。家族歴は動脈硬化リスクを考えるうえで重要だ。そのため、筆者は家族歴がある患者には、インフルエンザワクチンを必ず勧めている。
もちろん、「ワクチンを打てば心筋梗塞にならない」という話ではない。心血管病予防の基本は、血圧、糖尿病、コレステロールをきちんと管理し、喫煙しているなら禁煙することだ。そのうえで、心筋梗塞の引き金になり得るインフルエンザ感染リスクを減らすという考え方が大事になる。
ワクチン接種と認知症リスク
続いては、認知症との関係だ。「母がアルツハイマー病でした。自分も心配です」。こんな相談も珍しくない。筆者は認知症の家族歴がある人にも、インフルエンザワクチンを勧めている。
ただし、心血管疾患とはエビデンスの強さが違う。心血管疾患の研究と違って、認知症では現時点で観察研究が中心だからだ。ただ、その結果は示唆に富む。


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