発症予防については、アメリカのミネソタ大学を中心とする研究チームの、今年9月に『アメリカ医師会誌(JAMA)』に掲載されたデータが新しい。直近1年間の69研究を分析したもので、予防効果は研究によって19~60%と幅があった。これは流行株とワクチン株の一致度や、接種者の年齢などで効果が左右されるためだと思われる。
むしろ筆者が患者に強調しているのは、重症化を予防する効果のほうだ。先の研究では、高齢者のインフルエンザ関連入院を19~43%、死亡を29~65.8%減らす効果が示された。
日本からも同様の研究成果が報告されている。東京大学の研究チームが2023年5月に『Vaccine』に報告した65歳以上・8万3146人を解析した研究では、ワクチン接種者のインフルエンザ発症リスクは、非接種者の約47%にとどまった。
国立国際医療センターの研究チームが2022年8月に『Vaccine』に発表した、75歳以上の高齢者を対象に解析したLIFE-VENUS研究でも、接種者はインフルエンザ関連入院が28.9%少なかった。
では、子どもの場合はどうか。
アメリカ疾病対策センター(CDC)の研究チームが今年7月に『Pediatrics』に発表した、アメリカの8シーズンにわたる全国データの解析では、インフルエンザによる小児死亡に対するワクチン有効率は80%であることが示された。
心臓病リスクを減らす可能性
最近、筆者が患者によく説明するのが、インフルエンザと心臓病の関係だ。
糖尿病や高血圧、脂質異常症のある患者に、「今年もインフルエンザワクチンを打っておきましょう」と勧めると、「心臓や血糖の治療をしているのに、なぜインフルエンザなんですか」と聞かれることがある。
このとき、筆者はこう答えている。「インフルエンザは、単なる『ひどい風邪』ではありません。心筋梗塞の引き金になることがあるんです」。
カナダのトロント大学を中心とした研究チームが、2018年1月に『ニューイングランド医学誌』に報告した研究では、インフルエンザの診断後7日間は、急性心筋梗塞で入院する頻度が通常時の約6倍に上昇していた。


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