彼は知っていた。作りたての醤油は赤く澄んだ色で、華やかな香りが漂う。一方、開封してしばらく経った醤油は空気に触れることで黒ずみ、香りが飛んでしまうことを。
「自分と同じように、悲しい思いをする人をなくしたい……!」
思い立ったら即行動。いかに「醤油の鮮度」を保ち、消費者に赤い醤油を味わってもらうか、試行錯誤の日々が始まった。
「落とし蓋」の失敗と、一本の論文との出会い
最初に思いついたアイディアは、「1Lのペットボトルの中に落とし蓋をし、空気に触れる面積を減らす」という素朴なものだった。試しに開発室で実験してみると、意外にも結果がいい。しかし、コスト面が壁となった。
「発想は理にかなっていましたが、部品点数が増え、充填工程が複雑になります。また、容器のコストが高くなるうえ、大量生産が難しいという問題がありました。技術的には面白いものでしたが、単価数百円の商品に採用できるレベルのコストではなかった、と聞いています」(商品開発部 包装容器開発室 室長 河戸哲弥さん)
半ば諦めかけていたとき、偶然にも一本の論文に出会う。それは、新潟県三条市のベンチャー企業・株式会社悠心が発表した、パウチ容器の技術に関するものだった。
「この技術を生かせるかもしれない……!」


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