ただ、この容器変更にはもう一つのメリットが生まれていた。それは、独自の技術を組み合わせることで、鮮度保持期間を90日から120日へと伸ばせたことだ。鮮度を長く保つほど捨てられる醤油が減り、それが食品ロスと環境負荷の削減へとつながっていく。容器の環境対応と鮮度向上が、互いに支え合う好循環を生んでいった。
食のプロに選ばれる理由
話は変わるが、首都圏における客単価7000円以上の和食店や寿司店(59店)のうち、同社の醤油を使用している店舗は79.7%にのぼるという(2022年1月、ぐるなび調べ)。こうして食のプロに選ばれている理由は、「赤く澄んだ色」「キレのある味わい」「豊かな香り」が支持されているからだ。
「ソースはペンキであり、醤油はニスである」——これはヤマサ醤油の根底にある思想だが、醤油の役割は素材の色・味・香りを塗りつぶすのではなく、持ち味を生かすことだそうだ。同社では創業以来、この価値観を軸に商品開発がなされてきた。
その証拠が、同社のシンボルマークの右肩に刻まれている、「上」の字だ。これはかつて江戸幕府から認められ、特に品質の優れた「最上醤油」の称号を得た証しである。
また、1895年(明治28年)には、関東で初めて宮内省(現在の宮内庁)の御用達に選ばれた歴史も持ち合わせている。(宮内庁の「御用達制度」は、1954年(昭和29年)に正式に廃止)。
これほどの看板を背負えば、普通は守りに入りたくなるものだ。しかし、世界初の鮮度保持容器を開発したり、大量生産が難しい600mlのボトルを製造したりと、この17年で同社はむしろ逆の道のりを歩んでいる。一体何に突き動かされているのだろうか。その答えは、ヤマサ醤油の歴史にあった。


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