一方の家計部門はどうでしょうか。経常利益は2.6倍に増加しているのに対し、人件費は1.2倍しか増えていません。金額ベースでは、経常利益の76.4兆円の増加に比べ、人件費は36.1兆円の増加です。同期間中に雇用が増えていますので、平均給与を見ると、12年度に比べて、わずか1.13倍の増加にとどまっています。
さらに期間を長く取れば、バブル崩壊後の93年度から経常利益は6.1倍になっていますが、平均給与は1.1倍と、40年以上ほとんど変わっていないのです。
利益が増えたのに、賃上げを抑制することにより、労働分配率は企業の規模にかかわらず大幅に低下しています。これが家計部門が好景気を実感できない要因です。
内部留保の使い方が問題
こうした状況下で、内部留保の増加を問題視する人がいます。しかし経済学の観点からは、その指摘は正しいとは言えません。内部留保は単に過去の利益の蓄積にすぎないので、それ自体に良いも悪いもありません。問題はその使い方です。
内部留保が増え、企業がそれを積極的に投資に充てれば、将来の期待成長率は高まります。内部留保が増えて、現・預金が減るケースは経済にとって好ましいシナリオです。ネガティブシナリオは、内部留保が増える過程で現・預金がため込まれることです。企業が投資をせずに現・預金をため込むと、設備投資が不足し、労働分配率が下がれば、経済の最大の柱である個人消費も低迷します。一方、現・預金は眠っているだけなので、家計部門のマイナスを相殺するような成長は生み出されません。
実際にこうした悪影響が出ていることは確認できます。特に中小企業の状況は非常に不健全です。12年度から内部留保が90.7兆円も増えているのに対し、現・預金を82.2兆円もため込んでいます。
一方、大企業は、投資家の圧力があるためか、259.6兆円の内部留保の増加に対し、現・預金の増加は64.4兆円のみです。結果として、内部留保に対する現・預金の比率は中小企業が88.7%を占めるのに比べ、大企業は29.4%のみです。


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