戦後に作られた大規模団地の多くは、棟と棟の間に緑地や空地を取り、商店、学校、公園、集会所などが計画的に配置されました。
多くの団地では車の多い幹線道路や最寄り駅から少し離れているという不便さもありますが、静かですし、近くにはこぢんまりした商店街があり、買い物の途中でも顔見知りと会えます。運動しようと頑張らなくても自然とたくさん歩くことになり、交流会に参加しなくても近所付き合いであいさつが生まれます。
健康行動を本人の努力だけに頼らず、日常生活に組み込む舞台装置になりえるのです。
その実践例として注目される場所の1つが、千葉県柏市にある豊四季台(とよしきだい)地域です。柏市、東京大学、UR都市機構が2010年から連携し、在宅医療や介護だけでなく、生活支援、生きがい就労、外出や交流を促す環境づくり、健康づくりなどを一体として進めています。
柏市の高齢者を対象に、ある時点での生活習慣とフレイル(身体機能の衰え)の状態を比べた研究では、栄養・運動・社会参加の3つがいずれも揃っていない人は、すべて揃っている人に比べ、フレイルがより重い状態にある可能性が約7.5倍高いという結果も報告されています。
つまり、団地で得られるような運動や社会参加が少ない環境では、高齢期の体の衰えにつながりやすい可能性があるのです。
暮らし方を残して設備は改善
もちろん、古い団地や古い家そのものは健康によいわけではありません。
エレベーターのない階段、冬の寒さ、夏の暑さ、暗い通路、老朽化した設備……は、転倒や閉じこもりの原因になります。したがって、断熱、耐震、バリアフリー、照明、防犯、交通手段は改善していかなければなりません。
大切なのは、建物を更新するときに、そこで長年育ってきた緑、人のつながり、商店や居場所まで一緒に壊してしまわないこと。そういう意味では、団地再生とは、建物や部屋を改良するだけではなく、年を重ねても、外出する場所と人との関係、そして自分の役割を失わずにすむ町へと更新することでもあるのです。


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