歴史を振り返ると、2005年にアブダビのムバダラ開発会社がフェラーリ株の5%を取得したことがあった。だが、これはアブダビでのテーマパーク「フェラーリ・ワールド・アブダビ」開設などに向けた協力関係の意味合いが強く、2010年には当時の親会社フィアットが買い戻し権を行使して株式を回収している。
フェラーリにとって中東やその他の外資は、限定モデルやテーラーメイドを購入してくれる極めて重要な上客が集まる市場であり、モータースポーツのパートナーであっても、会社の舵取りを委ねる相手ではないのだ。
この独立性を支えているのが、フィアット創業者一族であるアニェッリ家の持株会社、エクソール(Exor N.V.)を中心とした株式戦略である。
ジョン・エルカン率いるエクソールは、フェラーリ株の保有比率を20%強まで下げる動きを見せている。2025年にも株式の一部を売却して流動性を高め、得た資金を別の成長分野へ投資する柔軟さを見せた。
一見すると持ち分を減らしているように思えるが、ここには仕掛けがある。フェラーリが採用している特別議決権(ロイヤルティ・ボーティング)制度だ。
株式を長期保有する株主に2倍の議決権が与えられるため、エクソールは持株比率を下げても30%を超える議決権をしっかり確保している。資本を効率よく動かしつつも、経営の主導権は決して手放さない。実に合理的でスマートな手腕と言える。
ピエロ・フェラーリ副会長は信託を設立
もうひとつの重要な軸が、創業者エンツォ・フェラーリの息子であるピエロ・フェラーリ副会長の動きだ。ピエロは2022年末、自身が保有する約10%のフェラーリ株式について、ピエロ・フェラーリ信託(Trust Piero Ferrari)を設立した。
これは一族の資産を次の世代へスムーズに引き継ぐためのアレンジだ。配当などの所有権は娘のアントネッラや孫のエンツォ・マッティオーリ・フェラーリらに譲りつつ、株主総会で意思表示を行う議決権はピエロ自身がそのまま保持する。
この信託によって、将来的に株式が散逸するのを防ぎ、エクソールとの協定を維持しながら一族の意向を経営に反映し続ける仕組みを整えたわけだ。


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