もう1つ重要なのは、人間社会は「これまでの気候」を前提につくられてきたということです。
農業では、その土地の気温や雨の降り方に合わせて、作物や品種、栽培時期が選ばれてきました。都市の排水設備や河川の整備、住宅のつくり、学校や職場の暑さ対策、医療や防災のしくみも、過去の気候を前提に整えられてきました。
ですから、温暖化の問題は「少し暖かくなるだけなら、人間は住めるのではないか」という話ではありません。多くの場所で、すぐに人が住めなくなるわけではないでしょう。
けれども「これまでの気候」を前提とした「これまでのやり方」を全部そのまま続けられるかどうかは別問題です。作物を変える、暑さ対策を強める、洪水や高潮への備えを見直すといった変更が、社会のあちこちで必要になります。
ただし、こうした変更は思い立ったらすぐにできるものではありません。品種の開発や設備の更新、都市計画、防災体制の整備には、時間も費用もかかります。だからこそ、同じ気候変化でも、早くから準備を進められる社会とそうでない社会では、受ける影響が違ってくるのです。
これが気候リスクを考えるうえでとても大事な点です。
「平均気温が少し高くなる」の問題
Q:温暖化で異常気象はどう変わるのか?
A:平均気温が少し高くなるだけで「極端な高温」は大きく増える
猛暑や豪雨、干ばつといった異常気象そのものは、温暖化が始まる前から起きていました。大気や海はもともと変動しているので、ある年にひどく暑くなったり、ある地域で大雨が降ったりすること自体は、自然のゆらぎの中でも起こります。
一方で、近年は猛暑や豪雨が実際に増えていることも、観測データから見えてきています。ここでは、その話をもう少し踏み込んで考えてみましょう。ポイントは、温暖化が異常気象をゼロから生み出すということではなく、もともと起こりうる極端な現象の起こりやすさや強さを変えていく、という点です。


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