実は小森さんはレストランをやってみたかったというほどの大の料理好き。小さなキッチンでフレンチのフルコースを作って、皆にふるまうほどの腕前である。その小森さんが、しみじみと言うのである。
「おでんせの夕食は上げ膳据え膳で、本当にありがたいです。私は料理を作るのも食べるのも大好き。希望も喜びもあります。でもね、洗い物をしなきゃと思うと、絶望的になるんです。なんの希望もありませんでしょ」(小森さん)
おでんせの夕食は小森さんに多大な希望をもたらしてくれるのである。
食卓がすこやかな老後の日々をつないでいく
もう1つ、誕生会もおでんせの希望と喜びの食卓だ。その日の夕食は誕生日の居住者がリクエストしたメニューになる。調理スタッフには元寿司職人の人がいて、寿司をリクエストすると、握りたての寿司を堪能できるという。
「一貫ごとにお寿司の説明をしてくださって、お寿司屋さんのカウンターでいただくみたいのなの。そのスタッフの方は土曜日が担当だから、誕生会をわざわざ土曜日にズラす方もいるんですよ」(小森さん)
話を聞くほどに、食事は人を幸せにすることを実感する。年齢を重ねると、誰しも耳が遠くなり、足腰が痛くなり、物覚えが悪くなる。そういう肉体の変化は暮らしに表れる。
おでんせの食卓では居住者たちの肉体の変化を皆が許容し、暮らしの変化を見逃さない。食卓がすこやかな老後の日々をつないでいくのだ。


※ログイン後、コメント入力が可能です。