蔣氏には「蔣家の正統性や血統」をめぐる疑惑がつきまとう。26年9月には、故・郭礼伯将軍の遺族側から記者会見が開かれ、DNA鑑定を求める声が改めて上がった。
そもそも蔣氏の父・章孝厳(後の蔣孝厳)氏と叔父の章孝慈氏は、長年にわたり蔣経国元総統の庶子とされてきた。一方で、双子の母である章亜若氏と、国民政府の軍人だった郭礼伯氏との関係をめぐっては、双子の実父は郭氏ではないかとの説も以前から存在している。
蒋経国・元総統につらなる血筋ゆえの問題
そうした中、郭礼伯氏の長男である郭貽熹氏が記者会見に出席し「父が生前、章孝厳・章孝慈の双子は自分の実子だと語っていた」と明かした。
郭氏は、長年続いてきた身元をめぐる議論に終止符を打つべきだとして、蔣万安氏とのDNA鑑定に応じる用意があると訴えた。26年9月14日の記者会見でも、郭氏は「自分は鑑定に応じる」と改めて表明している。
これに対し蔣氏は9月8日、「選挙のたびにDNAの話をするべきではない」とし、4年前にも同じ問題について回答していると説明した。9月14日にも、報道陣からDNA鑑定について問われ、「4年前(22年)にすでに回答した」と述べるにとどまった。
蔣氏は22年にも、血縁の問題について「姓が章か蔣かは重要ではない。台湾を愛することが自分のDNAだ」という趣旨の発言をしており、家族の血統よりも台北市政や台湾の将来を重視すべきだとの立場を示していた。
一方、05年に父の章孝厳氏が姓を「章」から「蔣」に変更した際の経緯も、この問題を複雑にしている。章孝厳氏は02年ごろ、法律上の母とされていた紀琛氏とのDNA検査を行い、母子関係がないことを確認した。
その後、出生記録や親族の証言などを含む一連の手続きを経て、身分証の父母欄を「蔣経国」「章亜若」に変更した。さらに05年3月、蔣経国氏の妻・蔣方良氏の死去から一定期間を置いたうえで、「蔣」姓への変更手続きを行ったと本人が説明している。
ここで重要なのは、当時DNA検査そのものが行われなかったわけではないという点だ。実施されたDNA検査は、法律上の母とされていた人物との親子関係を否定するためのものであり、蔣経国氏との父子関係を直接確認するDNA鑑定ではなかった。
このため、郭氏側から改めてDNA鑑定を求める動きは、蔣氏の父方の血縁について科学的な検証を求める議論につながっている。
ただし、現在公表されている資料だけから、郭礼伯氏が章孝厳・章孝慈両氏の実父だったと確定することはできない。また、蔣経国氏自身の日記にも双子の出生をめぐって別の説明が記されていたことが報じられており、両氏の父親をめぐる問題には複数の説が存在する。

