そもそも、今回の人事で高市首相が最優先課題としたのは「来秋の自民党総裁選挙での無投票再選の実現」(側近)だった。だからこそ、党内の反高市勢力につけ入る隙を与えないために、誰もが否定しにくい「挙党態勢構築」を人事戦略の軸にしたとされる。
そのため、林氏の処遇についても、高市首相は当初、総務相に留任させることで「閣内封じ込め」を模索したとみられている。
高市首相が人事の具体化に本格着手したのは、7月28日午後の麻生太郎副総裁と鈴木俊一幹事長との3者会談。ある党幹部によると「副総裁・幹事長の再任と、木原稔官房長官の留任で合意した」という。
党内に残る唯一の派閥・麻生派を率いる麻生氏からの支持取り付けが、高市首相にとって「再選戦略の唯一最大のカギ」(官邸筋)。それだけに、麻生氏の再任とのセットで、折り合いがよくなかった同氏義弟の鈴木氏の再任も固めることが「人事の出発点となった」(同)。
そうした中で、高市首相が最も神経を尖らせていたのが「林氏の処遇」(官邸筋)。というのも、林氏は昨秋の総裁選で茂木外相、小泉防衛相、小林政調会長とともに高市首相と争い、議員票では小泉氏に続く2位、党員・党友票との合計でも高市・小泉両氏に次ぐ3位に食い込んだ実績を持つからだ。
党役員と内閣改造を切り離した高市首相の思惑
しかも、林氏は「党内リベラル勢力の砦」とされてきた旧岸田派のナンバー2。高市政権が推進する積極財政や防衛費の拡大には否定的な、「財政規律重視のハト派の旗頭」(政治ジャーナリスト)との立場にある。だからこそ、党内でも「ポスト高市の最有力候補」(自民党長老)との見方が広がっていた。
そうした状況から、今回の高市首相の人事戦略でも「林氏の次期総裁選への出馬を阻止することが最重要ポイント」(同)となったのは当然だった。そこで高市首相は「林氏留任による封じ込め」を狙い、茂木・小泉・小林各氏の留・再任を固めたうえで、9月8日に林氏と直談判したとされる。
同日の首相動静から推し量ると、双方のスマートフォンでの密談は夕刻とみられる。その際、「内容は絶対に他言しないことを約束した」とされるが、林氏は同夜、極めて親密な政界関係者に「最初は留任を断った」と“秘密”を漏らしたという。
この“密議”を踏まえて高市首相がすぐさま繰り出したのが、「林氏の外堀を埋める戦略」(官邸筋)だった。具体的には、9日に党役員人事と内閣改造人事を切り離し、「16日に党役員、17日に内閣改造」という段取りを固め、関係者に伝えた。


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