この日、東室蘭―長万部間に投入されたバスは12台だった。特に長万部駅では、駅前のロータリーではこれだけのバスが収まりきらないことから、駅前の道路に多数のバスが待機する様子が見られた。
9月3日から9月10日の復旧までは、代行バスの区間は洞爺―長万部間に短縮し3往復に増。札幌―洞爺間を特急北斗号が、長万部―函館間を臨時快速列車が結んだ。
山線をもっと活かすことはできなかったのか
筆者も実際に代行バスに乗車したところ、かなりの数の職員が応援のため現場に駆けつけており、相当な手間と労力がかけられて運行が継続されていることがわかった。さらに、代行バスの運行自体には大きな混乱はなく、現場の多大な努力を感じることができた。
しかし、今回の室蘭本線の寸断では「なぜ特急北斗号を山線で迂回運転できないのか」という声も多く耳にした。
記憶にあるのは2000年の有珠山噴火時に特急列車が山線を迂回運転したことだ。このときは室蘭本線がおよそ1カ月間にわたって寸断されたことから、臨時の特急北斗8往復、寝台特急北斗星や急行はまなすなどの夜行列車3往復、貨物列車5往復の運行が行われ、当時の列車本数で比較すると旅客列車の輸送力は68.8%までに、貨物列車の輸送力は42.5%までに回復している。
現在でも例年9月には週末を中心に、札幌―函館間を山線経由で結ぶ臨時特急ニセコ号も運行されていることから、この区間に特急列車を設定することは難しくないはずだ。
ある関係者は迅速に特急列車による迂回運転を実現できなかった理由について「JR北海道の待遇の悪化により、優秀な人材を中心に退職者が続出し、社内に運行計画を立てられる人間が誰もいなくなってしまった」と暴露する。一方で、「特急北斗号の全便運休により乗務する列車がなくなってしまったことから運転士や車掌の人員には余裕が出ているはず。運行する列車がないのでおそらくこうした乗務員は待機を強いられているだろう」と話す。
さらに、この関係者によると、近年のJR北海道は人材の採用で困難を極めているという。「平成ヒト桁時代は、JR北海道は、北海道大学の優秀な学生が競って入社したがる人気企業だった。しかし、現在は、『JR北海道に入社したい』と言えば、親族一同から『あんなところに入ると人生を棒に振ることになるから絶対にやめろ』と必死で止められるのが実態だ。近年のJR北海道はそれまでの採用活動で見向きもしなかった道内の私立大学などに採用のお願いに回っているという話も聞いている」

