10月に死亡したリスザルの死因は、季節からは見落とされやすい熱中症でした。
一方、7月に死亡したミーアキャットの死因は、当初、時期や状況から熱中症が疑われましたが、実際は連鎖球菌の感染による敗血症でした。
「7月だから熱中症だろう」「10月だから熱中症ではなさそうだ」というように、暦だけを手がかりに死因を推測すると、真実を見誤ることがあります。
亡くなった動物の死因を特定する獣医病理医は、季節から生じる先入観にとらわれることなく、病理解剖や組織検査で観察された病変の情報を1つずつ積み重ねることで、死因を判断しなくてはなりません。
「暦」だけにとらわれない飼育を
そして、季節から生じる先入観に注意しなくてはならないのは、ぼくたち獣医病理医だけではありません。
そもそも不幸な事故を未然に防ぐためには、動物を飼う人も、季節のみを判断材料にして飼育方法を決めるべきではありません。「6月だからまだ冷房は必要ない」「10月になったから送風は切っていいか」といった思い込みは危険です。
カレンダーにとらわれず、その日の気温、日差し、風通し、湿度など、動物が実際に置かれている環境に気を配り続けること。そして、ささいな変化も見逃さないよう、目の前の動物をよく観察すること。それは、動物を飼う者の最低限の責任でもあります。
状況だけでは正確な死因は特定できず、病理解剖をしてみなければ本当のところはわからないことが多い――今回ご紹介した2つのエピソードは、それを示す象徴的な症例です。死因を明らかにしなければ、対策を誤ってしまうこともあります。
動物の死因究明によって得られた知見は、後に残された動物たちの治療や飼育管理にも活かされます。生きている間にはわからなかった病気を死後に明らかにすることで、次の命を守る。その意味で、死因の究明は獣医療における「最後の砦」の1つといえるでしょう。
死因の取りこぼしによる不幸な死が続かないよう、これからもできるだけ多くの動物たちの病気や死因を明らかにしていきたいと思っています。


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