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ライフ #開業医がこっそり教える医療のリアル

彼女の発見なくして有名女優の"予防的乳房切除"はなかった…開業医が尊敬する「遺伝性乳がん」研究者の信念を貫く生き方

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メアリー=クレア・キング
若き日のメアリー=クレア・キング(写真:Science Photo Library/アフロ)
  • 松永 正訓 医師・ノンフィクション作家
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90年10月にキングが全米人類遺伝学会で「遺伝性乳がんを起こす遺伝子は、17番染色体の上にある」と発表すると、学会は騒然となった。

キングが乳がんの研究を始めてから16年が経っていた。そして、彼女の発表は、乳がんの原因遺伝子を取り出すことの競争開始の号砲でもあった。

キングは「あるマーカー」から出発して、DNAの文字を1つずつ読んでいった。それは砂漠の中を延々と歩くようなものだ。ゴールは西にあるのか東にあるのか、それもわからない。また50キロ先にあるのか100キロ先にあるのかもわからなかった。

資金力で遺伝子を手にしたライバルに"前向きなコメント"

キングのライバルはミリアッド社というベンチャー企業だった。もちろん、乳がん遺伝子を取り出してビジネスにしようと考えたのだ。

キングが砂漠を一歩ずつ歩くのに対して、ミリアッド社は資金力にものをいわせ、最新鋭の実験機器を買い占めて、大人数の研究員を雇い人海戦術で遺伝子に迫った。最終的にはまるで砂漠の上空からヘリコプターで遺伝子を釣り上げるような方法で、目的の遺伝子を手にしたのであった。

これがBRCA1遺伝子だ。94年のことである。

競争に敗れたキングは、ミリアッド社の成功に対して寛大で前向きなコメントを出した。「ついに見つかった! これで新しいステップに進める。若くして乳がんで亡くなる女性を助けられるかもしれない」。

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