ノーラン監督が「gold standard(最高峰の基準)」と称し、『ダークナイト』『インターステラー』『オデュッセイア』といった作品で使用された「IMAXフィルムカメラ」からインスピレーションを得たベッセルズ(容器)だ。
TOHOシネマズの担当者によると、アメリカで大人気だった本商品を日本にも投入することになった経緯は、「本商品は映画作品とIMAXフィルムカメラを組み合わせたコンセプトが、映画ファンの皆さまの心をくすぐるのではと思い、販売を決断しました」とのことである。
通常の映画グッズならば、映画に登場したキャラクターやアイテムなどをモチーフとしたグッズが販売されるところだが、映画を撮影したカメラに焦点を当てたグッズが話題となるところに、クリストファー・ノーランという映像作家をめぐる特異性がある。
その背景には、デジタル全盛時代であるにもかかわらず、過度なCG依存に陥らず、巨大な実物セットや特殊効果、スタントなどを駆使するなど、“リアル”を信条とするノーランの作家性がある。デジタル化の波に押され、失われた技術となりつつあった「IMAXフィルムカメラ」(デジタルで換算すると18K相当の解像度とも言われる)にこだわり続けてきたのもノーランならではのスタイル。そんな彼が映画に捧げる情熱と狂気は、往年の巨匠監督たちの姿と重なり、映画ファンの郷愁とロマンを大いに刺激し続けてきた。
全編を「IMAXフィルムカメラ」で撮影した初の長編劇映画
『オデュッセイア』はそんなノーランの作家性を語るうえで集大成的な作品となっている。その背景と哲学に触れるために、ここから少しだけ技術的な話になることをご容赦願いたい。
子どもの頃から巨大スクリーンに大型の映像が投影されるIMAXのフォーマットに魅せられてきたノーランは「映画全編をIMAXフィルムカメラで撮るのが夢だ」と公言していたが、実はこれまでの「IMAXフィルムカメラ」での撮影は、予算面の問題のほかに、物理的に巨大なフィルムの駆動音が撮影の制約となっていた。その駆動音は、本作の撮影監督のホイテ・ヴァン・ホイテマが「暴走した芝刈り機」と評するほどで、そのためクローズアップの撮影や、会話劇などの撮影は非常に困難であった。
そこで近年の『オッペンハイマー』や『罪人たち』といったIMAXフィルムカメラでの撮影を敢行した映画では、アクションシーンなど作品の一部を「IMAXフィルムカメラ」で撮影、会話シーンなどは、往年の超大作映画で使用された、より静寂性の高い65mmフォーマットのフィルムカメラなどを併用する、というやり方がとられてきた。
だがそんな状況を改善すべく、ノーランは本作のために、新型の「IMAXフィルムカメラ」を開発するようIMAX社に依頼。今回新たに開発された「IMAXフィルムカメラ」は撮影の駆動音を解消するための「ブリンプ」と呼ばれる消音器を搭載。ホイテマいわくその駆動音は「潤滑油をしっかりと塗ったミシン」レベルにまで抑えられ、アクションだけでなく、会話劇の撮影も可能となった。その結果、『オデュッセイア』では、従来型と新型のIMAXフィルムカメラを併用することで、全編を「IMAXフィルムカメラ」で撮影した初の長編劇映画となった。


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