
では、保護者として教育行政の「内側」に入ると、何が見えるのだろうか。東京都中野区教育委員の岡本淳之氏と、青森県教育委員会の元委員・新藤幸子氏。2人はともに、学校や地域に関わってきた保護者として教育委員になった。
教育委員会では、何がどのように議論されているのか。そして、保護者や地域、子どもの声は、意思決定の場にどう届いているのか。
「教育委員会の中を知りたい」
岡本氏が東京都中野区の教育委員になったのは、2021年3月。現在2期目を務めている。きっかけは、17~18年に区立小学校のPTA会長を務めたことだった。PTA活動を通じて学校や地域と関わる中で、「教育行政の中では何が起きているのだろう」と思うようになったという。
「中野区には、戦後の教育委員会の公選制(教育委員を住民が直接選ぶ制度。中野は準公選制)の名残から教育委員会を活性化しようという風土があり、教育委員候補者を広く募る公募制度がありました。PTA会長を終えてひと息ついていたタイミングで、区報でその案内を見つけたんです」
仕事では、学校管理職向けの月刊誌『教職研修』の編集に携わっている。教育行政の「中」を知りたい。仕事で得られた知識や経験を生かし、区の教育の役に立ちたい。そんな思いから手を挙げた。論文や区長へのプレゼンテーションを経て、教育委員に選ばれた。
では、教育委員会では、実際に何が話されているのか。中野区の定例会は、月3回ほど。教育予算、学校の建て替え、教科書採択などの議案を審議するほか、いじめや不登校、学力・体力調査、教員の働き方改革、学校運営協議会など学校教育をめぐるさまざまな報告を受け、意見交換する。
ちなみに教科書採択では、各社の教科書をすべて読み、参考資料をもとに社名を隠した状態で委員同士が議論して決定。相当な時間をかけて選んでいるという。
「中野区は定例会の回数が多く、計画の初期の段階から情報共有してもらえます。各委員がそれぞれの立場から自由に意見を述べ、反映されることも多いです」
例えば体力向上プログラムの見直しの議論では、「中学校の体力テストの持久走は、1500m走のままで良いのか」と問題提起した。「1500m走る」と聞くだけで学校に行きたくなくなる子がいるかもしれない。生徒が前向きに取り組める体力調査のあり方を考えられないかと提案し、今後見直しがなされるかもしれない。


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