スウェーデンにあるカロリンスカ研究所のモシングらは、双子レジストリに登録された約1万500名の双子を調べました。1人ひとりについて、音楽の練習時間と音楽の力のつながりを分析したのです。
双子の研究は、生まれつきの影響と育った環境の影響を分けて見るのにぴったりの方法です。遺伝子をほぼ100%共有する一卵性双生児と、約半分を共有する二卵性双生児をくらべます。二組の似ぐあいの差を見ると、その性質がどれくらい遺伝で決まっているかを見積もれるのです。
「練習がすべて」を大きく揺さぶる結果
モシングらは、「もし練習が音楽の力をぐんぐん伸ばすのなら、同じ家庭で育った一卵性双生児のうち、たくさん練習したほうが力も高くなるはずだが、本当にそうなっているのか」という問いを立てました。この分析から、世間で広く信じられている「練習がすべて」という話を大きく揺さぶる結果が出てきます。
まず1つ目。練習量それ自体が、遺伝で40〜70%説明されることが分かりました。音楽を何時間練習するかという行動そのものに、強い遺伝の土台があるのです。つまり「練習を続けられるかどうか」さえも、生まれ持った素質の影響を受けているということです。なんとも考えさせられる発見ですね。
2つ目は、もっと決め手になりました。一卵性双生児どうしのくらべ方です。同じ遺伝子を持ち、同じ家庭で育った一卵性双生児のペアの中に、練習量が大きくちがう組がありました。生涯の練習時間の差が最大で2万時間を超える組さえあったのです。これは、一流の音楽家が生涯に積む練習量を上回る差です。
もし練習が力を伸ばすのなら、同じペアの中で力に差が出るはずです。ところが一卵性双生児どうしでは、練習量の差の大きさは、リズム・メロディー・ピッチを聞き分ける力の差を説明する理由にはなりませんでした。たくさん練習したほうの子が、よく聞き分けられるようになっていたわけではなかったのです。
3つ目。練習量と音楽の力は、ぱっと見には、一方が増えると、もう一方も増えるという結びつきがありました。ところが遺伝の影響を計算で取りのぞいてみると、このつながりはほとんど消えてしまったのです。


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