AIホテルの話に戻りましょう。
AIに「100万人の好み」を分析させると、人間の委員会以上に強烈な、多数決マシーンが起動します。多数決が必要な場面は、あります――伝統の継承、社会の合意形成など。けれど、ビジネスの差別化や、人の心に熱狂を作る場面では、多数決はむしろ「毒」になります。
マーケティングの世界には、「平均的な顧客は存在しない」という古い格言があります。あなたの会社の「ターゲット顧客」も、平均値で描いた瞬間に、「誰でもないペルソナ」が出来上がります。冒頭のホテルが、もし「年に1度だけ、星空の下で食事を楽しむ、大人のための隠れ家」と決めれば、多くの「無難派」を切り捨てる代わりに、星空に焦がれる一部の人の心を、熱くつかみます。
誰の心にも刺さらない70点ではなく、特定の人にとっての200点を狙う。それが、ビジネスの差別化の本質です。
偏愛と「違い」が、熱狂を作る
ではいったい、何が「熱狂」を作るのでしょうか。
答えは、偏愛です。AIが平均化を進める時代だからこそ、人間側の偏愛――「変だ」と笑われるほどの個人的なこだわり――が、希少資源になります。
ここで、「他者との違い」も大事になります。自分の偏愛が、他者の偏愛と出会うと、ただの足し算ではなく、掛け算が起きます。1人の星好きと、1人の写真家と、1人の天文学者が出会えば、「満天の星空の下で写真ワークショップを開く隠れ家ホテル」のような、1人では作れない熱狂のサービスが生まれます。
違いは衝突のもとではなく、テコの原理で互いの力を増幅する装置になりうるのです。AIが「平均」を上手に作るからこそ、人間が持ち寄るべきは、「平均から外れた何か」。AIには絶対に出せない、あなただけの偏愛です。
ここで、私の話をさせてください。私は昔から好奇心旺盛で、いったん興味を持つと、普通から見て「ヤバい人」レベルで掘り下げます。中高は、数学と物理しか勉強しませんでした。大学で突然英語に目覚めて留学し、英検1級・TOEIC980点。GEの財務プログラムで、理系出身・借方貸方ゼロからファイナンスを学び、BCG時代は、いわゆるMBA科目を自学自習。


※ログイン後、コメント入力が可能です。