グーグルのアメリカ国内にある巨大なデータセンターでは、無数の棚の間をロボットが動き回り、記録メディアを出し入れしている。人々の生活からは、とうの昔に姿を消したと思われていた磁気テープも、その中に含まれている。
半世紀以上前の「枯れた技術」が、生成AI時代の到来で再び注目を浴びている。データセンターでは処理速度に優れるSSD(ソリッドステートドライブ)やHDD(ハードディスクドライブ)と、用途に応じて記録メディアが使い分けられている。大量のデータを安価に長期間保存できる磁気テープは、グーグルのほかマイクロソフトや中国の百度(バイドゥ)もデータセンターで採用している。
この磁気テープで、富士フイルムは世界首位だ。祖業の写真フィルム市場は、デジタルカメラの登場により2000年からわずか数年で10分の1へと急縮小。富士フイルムは医療機器や化粧品などへ事業領域を広げ、企業の危機を乗り越えた――。ここまでが、同社が「事業転換の成功例」と呼ばれるゆえんだ。
だが富士フイルムの強さは、事業転換だけでは語り切れない。時代遅れに見えた技術を残し、時代に合った価値をつくり直す。それもまた得意としてきたところだ。
家庭から消えた磁気テープ
代表例の1つが、売上高2000億円規模に成長したインスタントカメラ「チェキ」。スマートフォンの普及で写真のデジタル化が進む中、「撮った写真がその場で形になる」という体験に価値を見いだした。中でも消耗品のチェキ用フィルムは、粗利益率6~7割ともされる。
そして、もう1つの「隠れた高収益製品」として頭角を現しつつあるのが、冒頭の磁気テープだ。半導体材料やディスプレー材料などを擁するエレクトロニクス事業の一角を占める。25年度のセグメント売上高4562億円に対し、同事業の売上高は数百億円規模にとどまるが、26年度は前年比で約2倍への急拡大を見込んでいる。
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