世界最高のIP、幅広い事業ポートフォリオ、世界規模の事業基盤、そして人材。それらを一つの会社として動かすことができれば、「これに匹敵する企業はない」とまで語っていました。かなり強気です。ただ、この発言を「強いIPをたくさん持っている」という自慢だけで受け取ると、少し違うようです。「私たちは単なるESPNやストリーミング、テーマパーク、映画の集合体ではありません。私たちは『ウォルト・ディズニー・カンパニー』なのです」という発言に、その真意が表れていました。
収益が改善したDisney+の次の野望
ダマーロが繰り返したのが、「One Disney」という考え方でした。映画、テレビ、ストリーミング、スポーツ、テーマパーク、クルーズ、ゲーム、コンシューマープロダクツ。それぞれの事業は単独でも成立していますが、ダマーロはそれぞれの事業を組み合わせることによって、「ファンにシームレスで包括的な体験を提供できる」と説明しました。
D23についても、「『One Disney』の具現化そのもの」と表現しています。興味深かったのは、Disney+の捉え方です。ダマーロは、ここ数年でストリーミング事業の収益性が大きく改善したことに触れたうえで、Disney+が「D23のストリーミング版」になり得るという考え方を示しました。
Disney+は現在、映像を提供するサービスですが、そこにゲームや商品、テーマパークなどへの接点まで組み込めればどうなるか。ダマーロが描いているのは、動画配信サービス単体の成長というよりも、ディズニーが持つさまざまな事業をファン側から一つにつなぐ構想だと考えられます。
もっとも、異なるIPを一つにつなげれば、それだけで魅力的な体験になるわけではありません。上海ディズニーリゾートでは、スパイダーマンをテーマにした新エリアの開発が進んでいます。こうしてマーベルのヒーローまで次々とディズニーのテーマパークへ取り込んでいくことに、少々強引さを感じないわけではありません。
一方で、実際にアナハイムのディズニーランド・リゾートを訪れると、その印象も揺らぎます。数千億円規模ともいわれる巨額を投じてつくられた「スター・ウォーズ:ギャラクシーズ・エッジ」は、度肝を抜かれるほどのスケールでした。映画の世界を再現するというより、物語の中に入り込む体験そのものになっています。
スター・ウォーズも、もともとはディズニーが生み出したIPではありません。買収によって加わったIPであっても、いつしか「ディズニー」の一部として定着していく。そう考えると、IPを数多く所有していること以上に、それをさまざまな事業で新たな体験へと変えていくことが、総合エンターテインメント企業としてのディズニーの競争力なのでしょう。
ただし、既存の人気IPを広げ続けるだけで、次の100年をつくれるわけではありません。新しい物語やキャラクターを生み出し、それを次のIPへと育てていく力もまた必要です。100年を超える歴史があり、世界的なIPがあり、それを展開する事業と資金力もある。「全部持っている」と自負するディズニーに、次に問われるのは、ファンがまだ知らない物語をどれだけ生み出せるか、なのかもしれません。


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