かといって、これほど巨大な建築の解体には莫大な費用がかかる。実際に、当初の見積もりは約8億3000万円だった。アスベスト調査など未確定要素も多く、最終的な金額はさらに変動する可能性があった。
「解体もできない、建て替えもできない、売るにも売れない」──そんな八方塞がりの廃墟が、温泉街の中心部に何年も居座り続けていた。
「産官学金」4者連携というスキームの発明
転機は2021年に訪れた。
この年、みなかみ町は住宅大手・オープンハウスグループと出会う。両者の橋渡し役になったのが地元の群馬銀行だった。群馬銀行は地元での取引を通じてみなかみ町の魅力を肌で感じていた。そこへオープンハウス側から「みなかみ町を紹介してほしい」と依頼が舞い込んだのがきっかけだ。
2021年春にヒアリングが始まり、同年9月には東京大学大学院工学系研究科も加わり、「産官学金」4者による包括連携協定が締結された。
オープンハウス側は、みなかみ町に強いポテンシャルを感じていた。オープンハウスグループサステナビリティ推進部副部長の横瀬寛隆氏が挙げるのは、あらゆる交通手段がそろうアクセスの良さだ。新幹線の上毛高原駅、在来線の水上駅、そして水上・月夜野の2つの高速道路インターがあり、都心から新幹線で最短65分。その近さでありながら、自然が豊かである点に可能性を見いだしたという。
このスキームの最大の発明は「資金調達の方法」だった。
土地および建物(遊技場)はオープンハウスグループが取得。建物(本館群)はみなかみ町が前所有者から寄付を受けて取得した。そしてオープンハウスグループから令和4〜6年度の3年間で計5億3000万円の企業版ふるさと納税を受け、観光庁からの観光地高付加価値化のための解体補助金と組み合わせることで、膨大な解体費用を最低限の元手で賄う仕組みが生まれた。
群馬銀行コンサルティング営業本部の内田公了氏は、「本来なら大きな負担となる解体費用を最小限に抑えて事業を始められるというのは、非常に意義が大きい」と評価する。ホテル事業の投資額に解体費用まで加われば、採算はとても成り立たなかった。


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