ここからは、彼女が持つ買い物のスタイルをもう一歩定量的に掘り下げることで、彼女がホンダのディーラーに対して抱いた感情を確認していこう。
彼女の属性である「40〜50代の既婚・子どもなし・パートタイム勤務」の類似セグメントにおける、自動車の支払い方法を集計したところ、「現金一括での購入」の比率は60%に達した。他セグメント(20代会社員:49%、30代ファミリー:55%)と比較しても高い。
このデータが意味するのは、彼女たちがクルマを購入する際、ローンを組んだり、残クレを利用して背伸びをした買い物をしたりすることを嫌う点だ。
彼女たちにとってクルマは、手元の余剰資金(あるいは生活設計の中で堅実に貯めた資金)の範囲で、「現金一括で払える範囲」で納得して購入する生活の道具なのだろう。
買い物スタイルは「背伸びをせずに自分にあった…」
彼女自身、「ふだんの暮らしの中で、大切にしていることや心地よいと感じる時間は何か」をインタビューで問われた際に、次のように話している。
「夫と2人で暮らしていますが、日々の生活では家族との時間を大切にしています。家でメダカを飼い始めたので、卵を産んでいるかなと見るのがちょっとした楽しみですね。背伸びをせずに自分にあった、穏やかで安定した生活がしたいなと思っています」
この「背伸びをせずに自分にあった、穏やかで安定した生活がしたい」という部分が買い物スタイルとリンクすることがわかる。
だからこそ、彼女たちはあせらず、じっくり価格や仕様を吟味したいという独自の買い物ペースを持っているのだ(同層の「クルマを選ぶ際はじっくり検討する」への肯定派は85%以上である)。
しかし、当時のホンダのディーラーで、比較検討をあせらせるような接客を受けてしまった。これは、現金一括で着実に買い物を進めたい彼女の「堅実な生活設計・購買スタイル」に対するミスマッチである。
顧客体験(CX)上の大きな減点材料となり、クルマそのものの良し悪し以前に、「この売り方をする店、このブランドからは買いたくない」と彼女は感じ、ホンダは検討候補から外れてしまった。


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